中学受験で志望校に合格するためには、何時間くらい勉強しなければならないのでしょうか。
本記事は、中学受験を考えていらっしゃるご家庭向けに、中学受験をする上で必要な勉強時間や、効率的な勉強法について詳細に解説しています。
適切な勉強時間を確保し、効率よく勉強を進めていくことで、合格に近づくことができます。お子さんの勉強時間についてお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
【この記事を読んでわかること】
- 中学受験に必要な学年別勉強時間
- 夏休みに必要な学年別勉強時間
- 偏差値と勉強時間は比例するのか
- 中学受験のための勉強時間についての間違った捉え方
- 効率的な勉強方法・上手なスケジュールの立て方
- 中学受験のために保護者ができるサポート
本記事がみなさんにとって、役に立つ情報となり、志望校の合格へと導く手助けができれば幸いです。
目次
【学年別】中学受験に必要な勉強時間
まずは、中学校受験に必要な学年別勉強時間について解説をしていきます。
中学受験の本格的な勉強は、新4年生(3年生2月)から始めることがもっとも良いと言えます。なぜなら、大手集団指導塾の中学受験のためのカリキュラムは新4年生からはじまり、新4年生から中学受験に向けた学習の基礎固めが始まるからです。新4年生から本格的に中学受験の勉強を始めれば、基礎固めを確実に行うことができ、志望校の合格に向けて良いスタートを切ることができます。
本章では、中学受験に向けた本格的な勉強をする小学4・5・6年生それぞれの勉強時間の目安を、平日と休日に分けてご紹介します。中学受験に必要な勉強時間は学年によって異なります。適切な時間を確保して勉強に取り組めば、徐々に成績も上がり、自信を持って入試に臨むことができるでしょう。
また、志望校の難易度や偏差値によっても勉強時間は変わります。お子さんに適した勉強時間を見極めて、効率よく学習を進めることが大切です。
4年生の勉強時間の目安
4年生の勉強時間の目安は、平日は1時間程度、休日は2時間程度です。
4年生から受験勉強を始めるのであれば、受験本番までには約3年間あります。3年間という長い時間をかけて受験勉強に取り組むことになりますので、継続的な学習習慣を身につけることが大切です。
知識を深めるのはもちろんですが、早い段階から毎日の勉強時間を確保し、勉強する習慣、学習時の集中力をつけていくことが、後に勉強時間が長くなってきたり、より受験勉強がハードになってきたときに大きく影響してきます。
中学受験は長丁場のマラソンのようなものです。最初から飛ばしすぎると、後で息切れを起こします。また勉強が苦痛であると感じてしまっては、お子さんが自ら勉強することも難しくなってしまいます。最初から無理に長時間勉強するのではなく、まずは毎日机に向かう習慣をつけましょう。
5年生の勉強時間の目安
5年生の勉強時間の目安は、平日は1〜3時間程度、休日は4〜5時間程度です。4年生よりも必要な勉強時間が2倍以上に増えます。
4年生時と同様、知識を深めることはもちろん必要ですが、集中して机に向かう時間を少しずつ長くしていきましょう。高い集中力を数時間保つことは難しいので、一日の勉強時間の中で休憩を挟みながら、もう一度机にむかって集中するという学習習慣ができると、理想的です。
後に説明しますが、上手くスケジュールを立てること、休憩を取ることも早い段階で身につけておきたいことです。これらは6年生の、さらに学習時間が増えた際にも、自分で管理し、工夫することができるので、これらの経験を早くからしておくと、自習時間が長くなる6年生で差が出てくる要因の一つとなります。
お子さんが平日3時間の勉強時間を確保するためには、家族の協力が大切になってきます。家族全員で1日のタイムスケジュールを組み、スケジュール通りに行動してみましょう。
例えば、
16:30-18:30:お子さんは勉強・親御さんは仕事か家事
18:30-19:30:家族で夕食
19:30-20:00:お子さんはお風呂・親御さんは夕食の後片付け
20:00-21:00:お子さん勉強・親御さんは仕事または読書など
21:00- :お子さんは自由時間・親御さんはお風呂
というスケジュールでは、3時間の勉強時間を確実に捻出することができます。
また、朝30分〜1時間程度早起きをして、勉強する習慣をつけることもおすすめです。朝は身体も脳も元気な状態で、テレビの誘惑も少ないので、集中して勉強に取り組むことができます。
目安となる勉強時間が2倍以上に増え、お子さんへの負担を心配される親御さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、家族でスケジュールを立てて、そのリズムに合わせて生活することで、平日3時間という勉強時間を確保することは十分に可能です。家族でお子さんを支えてあげて、5年生を良い状態で乗り越えられるようにしましょう。
6年生の勉強時間の目安
中学受験を目前に控えた6年生の勉強時間の目安は平日は3〜5時間程度、休日は8〜10時間程度です。受験日が近づくにつれて、勉強時間を増やすことができればなお良いでしょう。
6年生までに、集中して勉強する習慣、適切に休憩を取って再度集中し直す習慣がついていれば、受験に対する本人のモチベーションも高まり、勉強時間を増やしていくことも可能になります。
また、1日のうちで、勉強時間と勉強以外の時間のメリハリをつける工夫も大切です。高い集中力を維持するためには、勉強の合間にうまく休憩できるようなスケジュール作りと本人に合ったリフレッシュ方法が必要になります。
学校や食事・お風呂など、小さな息抜きを上手に使いながら、高い集中力をキープして受験勉強に取り組むようにしましょう。
【番外編】中学受験に必要な夏休みの勉強時間
続いて、学校が休みになり、自由な時間が増える夏休みの勉強時間について解説していきます。
「夏休みは受験の天王山」などと言う比喩もあるくらい重要な期間になります。受験勉強をする上で、約40日もある夏休みをどのように過ごすかはとても大切です。学校の授業という時間の制約がない分、お子さんが自由に使える時間は増えますが、様々なイベントや誘惑があるため、中だるみしやすい時期でもあります。
また、長い時間をかけて問題に取り組むことができる一方で、日常からかけ離れたスケジュール管理をしてしまうと、夏休みが終わって、学校やその他の生活に戻らなくてはならないときに、親子ともども、困難を感じることにもなりかなません。
中学受験に必要な夏休みの勉強時間は学年によって異なります。適切な時間で勉強に取り組めば、ライバルと差をつけることができ、秋以降の成績の伸びも期待できるでしょう。
前述の学年別勉強時間と同じく、夏休みにおいても、志望校の難易度や偏差値によって、勉強時間を変える必要があります。お子さんに適した勉強時間を見極め、効率よく学習を進めることが大切です。
4年生の夏休みにおける勉強時間の目安
4年生の夏休みにおける勉強時間の目安は、夏休み全体で150時間以上と言われています。夏休みは約40日ありますので、1日あたり3〜4時間の勉強時間を確保することが望ましいという計算になります。
勉強は1学期で学習した内容の復習をメインにしましょう。まとまった時間がある機会なので、苦手な教科や分野に時間をかけて取り組み、夏休み中に苦手分野をある程度克服できれば、秋以降の成績アップが期待できるでしょう。
夏休みには、ほとんどの塾で夏期講習が行われます。夏期講習に参加することで、1学期の復習を効率的に行うことができたり、同学年のよそのお子さんの学習の進度もわかるので、夏期講習に参加することはおすすめです。
また、苦手な教科や分野について、個別指導塾に通い、徹底的に苦手を克服することもおすすめです。150時間を目安とした勉強時間のうち、どの科目をどのように勉強するかは、早めに塾の先生などに相談すると良いでしょう。
一方で、4年生のうちは勉強だけでなく、「ある程度遊ぶこと」も必要です。5年生以降は受験勉強が本格化して、夏休みは満足に遊ぶことができません。4年生は、思いっきり夏休みを謳歌する最後のチャンスです。海やキャンプ、博物館や科学館など、お子さんが興味を感じる場所へ赴き、多くを体験させてあげることも、お子さんの長い人生を考えれば大切なことです。
5年生の夏休みにおける勉強時間の目安
5年生の夏休みにおける勉強時間の目安は、夏休み全体で200時間以上と言われています。一日あたりの勉強時間を計算すると、1日あたり5時間以上の勉強時間を確保することが望ましいという計算になります。
5年生になると、中学受験をするお子さんの大多数は塾に通い、夏期講習を受講しています。夏期講習は「4〜5日連続して授業があり1日休み」というサイクルを繰り返します。8月の中旬に7〜10日程度のお盆休みが入りますが、それ以外は夏期講習を開講している塾がほとんどでしょう。
夏期講習と通常の授業では、学習の進度が大きく異なります。通常の授業では週に1つの単元を終わらせるペースだったのが、夏期講習では週に2つ〜3つの単元を終わらせるペースにスピードアップします。
この授業のスピードについていくためには、予習復習が欠かせません。また、多くの場合、毎日宿題が出されるので、塾に通っていれば必然的に勉強時間は確保できるでしょう。5年生の夏休みは、塾の夏期講習に参加し、しっかりと勉強時間を確保しながら、授業外でも予習復習をする精神的・肉体的な体力をつけることができれば、6年生に向け理想的な良い状態と言えます。
6年生の夏休みにおける勉強時間の目安
6年生の夏休みにおける勉強時間の目安は、夏休み全体で300〜400時間以上と言われています。1日あたり8〜10時間以上の勉強時間を確保することが望ましいという計算になります。1日あたり8〜10時間勉強するということは、1日の起きている時間の大半を受験勉強にあてるということです。
この長時間の勉強時間を確保するためには、夏休み前に志望校や目標を改めて確認し、モチベーションを高めておくことが大切です。可能な場合は、夏休みに入る前に志望校の説明会や学校見学に参加するとよいでしょう。
小学5年生の夏休み以上にしっかりとスケジュールを立てて、管理を行った上で勉強することが重要になります。まずは苦手科目・単元を洗い出し、その苦手分野を克服するために使用する教材・取り組む目安時間を記載したスケジュール表を作成しましょう。
効率的な勉強方法とスケジュールの立て方については、後ほど詳しく解説していきます。夏休みは苦手な科目や単元を克服する絶好の機会です。この期間に苦手分野を克服しておくことが、2学期以降の直前期を過ごす上で重要になってきます。
偏差値と勉強時間は比例するのか?
ここまでは、いつ、どのくらいの勉強時間を確保することが望ましいのかを説明してきました。しかし、単純に勉強時間を長くすれば偏差値は上がっていくのかという疑問も出てくると思います。その疑問にお答えするために、偏差値と勉強時間は比例するのかについて説明いたします。
結論からお伝えしますと、偏差値と勉強時間に完全な比例関係はありません。偏差値を上げるうえで大切なのは、単純な勉強時間ではなく「学力が向上するための勉強時間」です。
ここでは、偏差値40・50・60のお子さんたちのよく見かける状態を取り上げて、勉強時間と勉強方法についてご説明いたします。偏差値60の子の勉強時間が、偏差値40の子の勉強時間より長くなることは往々にしてあります。
しかし、それは偏差値60のお子さんが単に「長時間」勉強することを意識して勉強したからではありません。志望校合格に向けて、学力が向上するための勉強(効率的に勉強)を行った結果、自然と勉強時間が増えただけの話なのです。
偏差値40のお子さんの勉強時間と勉強方法について
偏差値40のお子さんは、偏差値50以上のお子さんと比べて、勉強時間が格段に少ないという訳ではないことが多いです。塾に通っている場合であれば、ある程度の勉強時間は確保されますから、多少の勉強時間の違いが偏差値の差と直接結びつく訳ではありません。
偏差値40のお子さんと、偏差値50以上のお子さんの違いは、「復習を徹底的に行っているかどうか」にあることが多いのです。復習を疎かにしていると、テストや模試などで得点を取り切ることができず(部分的にはわかるが正解まで導き出せない)、偏差値が伸び悩むことになります。反対に復習を徹底的に行っていると、得点できるところまで記憶が定着していたり、理解できているため、得点力が高まります。そして、この偏差値の差が生まれてくるわけです。
塾の授業で習った時は理解できていると思った問題も、授業後に復習をしっかり行わないがために、一時的にはせっかく理解したことをどんどんと忘れてしまうのが一般的です。そして、偏差値が伸び悩んでいることに気を取られ、新しい問題集に手を出してみるなどして、良くない時間の使い方をしているパターンを多く見てきています。
受験勉強の基本は「解けない問題を解けるようにして、本番で解けるようにする」ことです。偏差値40だから「勉強時間が足りなのではないか?」「問題集が合っていないのではないか?」と焦る必要はありません。
まずは、復習を徹底的に行うようにすることが大切です。
偏差値50のお子さんの勉強時間と勉強方法について
偏差値50のお子さんは、ある程度の勉強時間を確保しているケースがほとんどで、偏差値60以上のお子さんと勉強時間に大きな差はありません。ここでも勉強時間の違いが、偏差値50と偏差値60の違いに直接結びついているわけではないと言えるでしょう。
偏差値50以上のお子さんと偏差値60のお子さんとの違いは、「効率的な勉強方法が身についているかどうか」にあることが多いのです。
偏差値60以上のお子さんは、勉強する上で以下のような工夫をしています。偏差値を55・60と伸ばすために、取り入れてみることをおすすめします。
- 正解だったかどうかだけにとらわれず、問題の本質をしっかりと理解する
- ちょっとした疑問も放置せず、塾の先生に聞いて解決する習慣をつける
- 苦手な分野に絞って勉強する
- 模試・受験当日を意識して、日頃から1問にかける時間を管理して勉強する
- 模試の際は、わかる問題とわからない問題を見極めて、正答率をあげる
効率的な勉強方法を身につけることで、さらなる偏差値アップが期待できます。自習時間においても、効率的な勉強をする習慣をつけるようにしましょう。
偏差値60のお子さんの勉強時間と勉強方法について
中学受験という小学生全体の1割程度の教育熱心な家庭のお子さんが集まる集団の中で、偏差値60というのは、かなり優秀なお子さんと言えます。
偏差値60のお子さんが、偏差値40・50のお子さんと比べて、極端に勉強時間が長いということはありません。違いを挙げるとすれば、以下の4つです。
- 中学受験に対する意識が非常に高い(目的が明確)
- 勉強の基礎がしっかりできている
- 志望校の入試の出題傾向をしっかりと確認している
- 復習を徹底することで、膨大な知識を定着させている
偏差値60のお子さんは、受験をする目的や志望理由が明確であり、受験勉強を自発的に行っているケースがほとんどです。そのため、「今日は4時間も勉強したから大丈夫」と勉強時間で自分の努力を測ることをしません。
基礎ができていない部分があったと思えば、徹底的に基礎固めを行いますし、志望校に沿った勉強・演習はできるようになるまで徹底して行います。このような自発的に勉強する姿勢が、膨大な知識を定着させ、偏差値を押し上げているのでしょう。
中学受験のための勉強時間に関する間違った考え方
以下の3つが、中学受験のための勉強時間に関して陥りがちな間違った考え方です。
- 十分な勉強時間を確保していれば安心だ
- 睡眠時間を少し削ってでも勉強時間を作るするべきだ
- 休憩時間を減らして勉強時間を確保するべきだ
これらの考え方を、以下のように変えていってください。勉強が効率的になり、偏差値アップに繫がることが期待できます。
- 十分な勉強時間を確保していれば安心だ
→勉強時間を確保するだけでは意味がない - 睡眠時間を少し削ってでも勉強時間を作るするべきだ
→睡眠時間を削ることは絶対にNG - 休憩時間を減らして勉強時間を確保するべきだ
→休憩時間を十分にとる
勉強時間を確保するだけでは意味がない
勉強時間はあくまでもある程度の理解度を高めるために必要な時間の合計であって、勉強時間の質が最も重要な部分です。目安となる勉強時間の達成は目的ではありません。
中学受験は勉強時間を確保し、机に向かわせれば偏差値が伸び、志望校に合格できるわけではありません。偏差値を伸ばし、志望校に合格するためには、「目の前にある1つ1つの問題の本質をしっかりと理解し、解けるようになる」という作業を繰り返す必要があります。
また、解ける問題だけを繰り返していても学力の向上には繋がりません。決められた勉強時間を確保できたかどうかで一喜一憂するのではなく、問題の本質を理解した上で、解ける問題が増えているかどうかを確認しながら勉強に取り組むことが大切です。
睡眠時間を削って勉強することは絶対にNG
睡眠時間を削って勉強することは絶対にNGです。反対に睡眠時間を十分に取ることで、日中に勉強した内容が整理されて記憶に定着していくとも言われており、勉強と睡眠は様々な関係があると言われています。
学校行事や他の習い事などが忙しいお子さんにとって、勉強時間を確保することは大きな課題となるでしょう。その際に「勉強時間を確保するためには、睡眠時間を少し削る他ないのではないか」という考えが頭をよぎることもあるかと思います。
これは周知の事実かもしれませんが、睡眠時間を短くしてしまうと、集中力の低下に繫がる可能性が高くなります。集中力がなくなると記憶力も低下していくので、勉強したことを覚えるのが難しくなり、勉強の効率そのものが悪くなるという悪循環に陥ります。
小学生は心身が著しく成長する時期にあたるため、睡眠時間を削ってしまうと勉強の効率が悪くなるだけではなく、代謝の悪化や免疫力の低下により体調を崩しやすくなったり、モチベーションの低下、疲れやすい、ネガティブ思考に陥るなど、心身にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。また、睡眠不足は、身長の伸びに大きく影響するとも言われており、今後の人生に関わるかも知れません。
中学受験の勉強には非常に多くの時間を費やす必要があるため、お子さんの睡眠時間への配慮は見落とされがちです。しかし、心身の健康を維持するためにも睡眠時間はしっかりと確保するようにしましょう。睡眠時間を削るのではなく、限られた時間のなかで効率良く学習ができるような工夫が大切です。
休憩時間を十分にとる
効率よく勉強するためには、十分な睡眠をとることと同じく適度な休憩時間がとても大切です。休憩によって、勉強で疲労した脳を休ませることができます。
親御さんご自身も、集中して仕事できるのは1〜2時間程度ではないでしょうか。そして、疲れたと感じたら、10分程度リラックスした状態で休憩をすると、気持ちを新たにまた仕事に集中できたという経験をお持ちでしょう。
お子さんの中学受験の勉強についても同じことが言えます。お子さんの集中力に合わせて休憩を取り入れるようにしましょう。また、休憩時間中にはスマホや漫画など、目を使う気分転換は控えた方がよいでしょう。仮眠や軽食を取る、外に出て空気を吸ったり、軽く運動することもおすすめです。
さらに、お子さんが小学6年生であるなら、入試の時間割に合わせ、休憩時間を設定することも効率的です。志望校の入試が試験時間60分、休憩時間10分であれば、60分間勉強した後に10分の休憩時間を設けます。このサイクルを繰り返すことで徐々に体が慣れ、試験本番の時間割に対応しやすくなります。
効率的な勉強方法・上手なスケジュールの立て方
ここまで、中学受験は勉強時間が長ければ偏差値が上がるわけではないということを紹介してきました。偏差値と勉強時間には完全な比例関係はありません。偏差値をあげていく中で大切なことは、単純な勉強時間の合計ではなく「学力が向上するための勉強時間」がどれだけ取れているかです。
本章では、効率的に勉強する上で大切な10のポイントをご紹介しております。この10のポイントを押さえた上で、勉強のスケジュールを立て、効率的に勉強をして、偏差値を上げていきましょう。
翌日のスケジュールは前日の就寝前に決めて書き出す
この作業は、お子さんだけに任せず親御さんも一緒に取り組むことをおすすめいたします。親御さんのチェックが入ることで苦手科目にもきちんと取り組むことができ、効率的に勉強をすることができます。
スケジュールは、以下の2ステップで組んでいきます。
- 「学校」「食事」「睡眠」「入浴」など、生活する上で欠かせない予定を書き込む
- 空いているところに勉強する教科・単元・練習問題のどのページかを具体的に書き込む
また、スケジュールを作成する際には、勉強する時間帯を意識するとよいでしょう。1日の中で効果的な学習効果が得られる時間は決まっています。夜だけで6時間確保するようなスケジュールは非効率的なため、同じ時間を勉強に費やすなら、勉強する時間帯を分散させることを意識するとよいでしょう。
特に脳のゴールデンタイムとされる朝の時間を上手に活用すると、効率アップが期待できます。また、夜の睡眠前の2時間も勉強効率が高まると言われていますので、この時間には暗記系の勉強をするのがおすすめです。
また、スケジュールを立てるときは、勉強する時間帯だけでなく、お子さんの性格や体質も意識してください。マイペースな子もいれば、完璧主義な子もいます。マイペースな性格であれば、勉強する気になるまで少し待ってあげる必要があるかもしれません。一方で、完璧主義的な傾向がある場合には、勉強に時間をかけすぎてしまうことも考えられます。
休憩しているタイミングで声をかけてあげると、お子さんも家族で一緒に頑張っていると感じられてモチベーションの維持にも繋がるでしょう。
休憩時間もスケジューリングする
翌日のスケジュールを前日の就寝前に決める際、休憩時間も必ず書き込むようにしてください。
本記事の「休憩を十分にとる」の章でもお伝えしましたが、お子さんが6年生であるなら、入試当日の試験時間に合わせて休憩時間を設定することも効果的です。志望校が試験時間60分、休憩時間10分であれば、60分間勉強した後に10分の休憩時間を設けます。このサイクルを繰り返すことで徐々に体が慣れ、試験本番の時間配分に対応しやすくなります。
スケジュールを立てる際は少し時間に余裕を持たせる
先ほどまでのスケジュールは1日のスケジュールについて話していましたが、スケジュールに余裕を持たせることについては、1日のスケジュールの他に1週間、1ヶ月間のスケジュールに関しても同様になります。
スケジュールを立てて計画的に勉強することは、効率的に受験勉強に取り組む上で非常に大切です。しかし、毎日スケジュール通りに決まった生活を送ることができるとは限りません。学校やご家庭の行事、お子さんの体調、宿題の量や学習状況など、さまざまな要素でスケジュールが乱れてしまうこともあります。
スケジュールを隙間なく詰めてしまうと、スケジュールが狂った際に対応することができなくなります。スケジュールが崩れてしまうと、睡眠時間を短くして対応しようとしたり、スケジュールを守れないことに罪悪感を感じてしまったりして、モチベーションの低下に繋がりかねません。
1日の勉強時間の15%程度は予備時間としてスケジュールを立てることで、勉強の進捗を見ながら柔軟にスケジュールを変更していくことができます。
学習スケジュールは細かく見直して修正する
学習スケジュールは細かく見直して修正するようにしましょう。
勉強は必ずしも計画通りに行くとは限りません。すべてをスケジュール通りにやらせようとするのはやめましょう。親御さんはスケジュール通りにいかないことで不安が募りますし、お子さんはそんな親御さんの顔色を伺って萎縮してしまう危険性があります。
できないことがあったら、今後のスケジュールを見直せばよいのです。次の日に変更してもよいですし、休日など多くの勉強時間が取れそうな日に組み込むなど、柔軟に対応するようにしてください。
リフレッシュする予定も立てる
ここで言うリフレッシュとは、1日の勉強の間の休憩時間のことではなく、遊んだり好きなことをさせてあげる時間のことを指しています。
中学受験を目前に控えていると、遊びや趣味の時間をすべて絶って受験勉強のみに集中してしまいがちです。特に、難度の高い中学校を受験するご家庭では、土日となると朝から夜遅くまで勉強しているということも珍しくありません。
ある程度の勉強時間を確保しなければ、志望校に合格するのが難しいのは事実です。しかし、この時期にしか経験できないこともたくさんあります。運動会や学芸会などの学校行事をがんばったり、友達と過ごす時間を大切にしたりするなどは、お子さんの成長にとって大切なことです。
また、小学校での生活が充実しており、毎日の生活を全体的に「楽しい」と感じているお子さんの方が、受験勉強にも意欲的に取り組める可能性が高いと言えるでしょう。
すきま時間を利用する
限られた時間の中で効率的に受験勉強を進めていくためには、ちょっとしたすきま時間を上手に活用することが大切です。
例えば、塾の授業が始まるまでの時間や、送迎バスが来るまでの待ち時間、電車での移動時間など、意識して探してみると勉強に充てられるすきま時間は意外と多く見つかるでしょう。1日にたった10分のスキマ時間でも、1年間に換算すると60時間にもなります。
すきま時間に効率よく勉強するなら、単語などの暗記系を中心に取り組むことがおすすめです。限られた時間に何度も繰り返すことが記憶の定着につながります。
間違った問題はすぐに復習する
塾でどんなに勉強したとしても、翌日になればそのうちの多くを忘れていると言われています。塾で習ったことを無駄にしないために、学んだ内容はその日のうちに復習して脳に定着させることが大切です。
さらには数日後、1週間後同じ問題を解いてみることで、自分が成長しているかどうかを確認することもできます。
エビングハウスの忘却曲線によると、初めて暗記した物は20分後に42%、1時間後に56%、1日後に74%、1週間後には77%も忘れてしまうと言われています。記憶の定着を図るためには復習がとても大切になるということがわかります。
勉強して忘れてしまった後に、同じ箇所をもう一度勉強するという作業は効率的ではありません。普段から復習を習慣にして、効率良くたくさんの問題が解けるように意識していきましょう。
算数の勉強を重点的に行う
中学受験において算数は全体において得点配分が高く、1問あたりの配点が大きい科目であり、点数の差が出やすいため、算数の勉強に比重を重くすることをお勧めします。
算数は得点配分が高い
中学受験の科目は国語・算数・理科・社会の4教科が一般的です。(学校によっては国語・算数・理科の3科目の場合や、2科目の場合あります。)そして、得点配分を見ると、多くの中学校では例えば、国語100点、算数100点、理科70点、社会70点というように、国語と算数に得点配分が偏ってます。算数は得点配分の高い科目の1つなので、重点的に勉強しましょう。
点数の差が出やすい
算数は難しい問題が多く、点数が取りにくい科目です。そのため、「算数の出来が合格と不合格の差を生む」と言っても過言ではありません。算数が得意な場合はさらに得意にして他の科目を引っ張れる得点源としましょう。また、苦手な場合は1問でも多くの問題を解くことができるように重点的に勉強しましょう。
中学受験のために保護者にできるサポート
志望校に合格するためには、お子さんご自身が効率的に受験勉強に取り組むことが何より大切です。しかし、お子さんはまだ小学生であり、親御さんのサポートが必要な年頃です。そのため、中学受験においては親御さんのサポートにより大きく結果が変わることもあり、非常に重要なポイントとなります。
本章では、中学受験を控えたお子さんのために保護者にサポートできることを3つご紹介いたします。
体調管理等の生活面のサポート
お子さんのために、以下のような生活面のサポートを行いましょう。
規則正しい生活を送れるようにする
お子さんが規則正しい生活を送るためには、親御さんのサポートが欠かせません。特に夏休みや冬休みなどの長期休暇に入ると、つい夜ふかしをしてしまう、朝遅くまで寝てしまうなど、生活習慣が乱れがちになります。生活リズムが崩れると、せっかく組んだスケジュールも予定通りに進まなくなるだけでなく、ダラダラと過ごしてしまった結果、時間を無駄にしてしまうことになります。
お子さんだけで規則正しい生活習慣を維持することは難しいので、親御さんがお子さんの起床時間・就寝時間・食事時間などを気にかけることは大切です。
食事面に気を遣い、体調を崩さないようにする
受験勉強中は体調管理も非常に重要なので、食事面にも気を配ることをおすすめします。
栄養バランスの良い食事を摂れば、身体の免疫力アップにつながり、体調を壊しにくくなります。また、記憶力などの脳機能を高めるDHAなど、積極的に取り入れたい栄養素を含んだ献立を考えるのも良いでしょう。
体調を崩してしまうと数日〜1週間程度勉強することができません。また受験当日に風邪を引いてしまうと、これまでの努力が水の泡になりかねません。日頃から食事面に気を遣い、大切な日に体調を崩しにくい身体をつくっていきましょう。
お子さんのメンタルケアをする
長い受験期間では、成績が伸び悩んで落ち込んだり、やる気が続かずスランプに陥ったりすることもあるでしょう。お子さんが挫折しそうなときは、親御さんが素早くメンタルをケアすることが大切です。
精神的なダメージが蓄積すると、受験勉強に対するモチベーションが下がり、お子さんの力だけではどうすることもできなくなってしまいます。どのようにケアすればよいかわからない場合は、塾の先生に相談してみるとよいでしょう。毎年多くの受験生を見ている塾の先生であれば、的確なアドバイスをしてくれる可能性が高いです。
また、日頃からお子さんの小さな努力や進歩を見つけて褒めることも大切です。人は出来てない部分ばかり目につくものです。しかし、出来ていない部分ばかりを毎日指摘していては、お子さんがやる気を失いかねません。
お子さんは、良い部分を評価してもらうことで、「お父さん・お母さんは自分を見てくれている」という喜びや安心感を持つことができ、安定した気持ちで受験勉強に取り組むことができます。
勉強に集中しやすい環境を作る
中学受験を控えているといっても小学生ですから、遊びたい欲があるのは当然です。また、様々な事柄に興味関心を抱くのが普通な年頃です。
勉強のために机に向かっても、周りに漫画やテレビゲームなどがあると、つい気が散ってしまって勉強を後回しにしてしまうということもあるでしょう。
そのため、勉強机・勉強部屋には気が散るものを置かないようにして、休憩時間などに好きなことをさせてあげるなど、勉強と遊びのオンオフの区別をつけやすい環境を作ることも、親御さんの大切な仕事です。
まとめ
本記事は中学受験を目指すご家庭向けに、中学受験をする上で必要な勉強時間や、効率的な勉強法を徹底解説してきました。中学受験には、6年生の時点で平日は3〜5時間程度、休日は8〜10時間程度、夏休み全体では300〜400時間以上の、とても長い勉強時間が必要だと言われています。
しかし、偏差値と勉強時間には完全な比例関係はありません。偏差値を上げる上で大切なのは、勉強時間以上に「学力が向上するための勉強時間」です。
本記事の「効率的な勉強方法・上手なスケジュールの立て方」で紹介した10のポイントを意識して、効率的に勉強する習慣をつけることが大切です。
そして、お子さんは受験生といえ、まだ小学生です。親御さんが生活・メンタル・環境面をしっかりとサポートしてあげてください。