中学受験で教育虐待が起きる本当の理由
——大手塾のシステムという元凶
教育虐待は、一部の家庭だけの問題ではなく、社会全体で向き合うべき課題となっています。同じ問題意識をお持ちの方——教育関係者に限らず——ぜひご連絡ください。意見交換を通じて、具体的な対策をともに考えていければと思っています。
中学受験で教育虐待が増えている——現場で見えてきたこと
「中学受験は虐待だ」という声は以前からありました。当初は、自分の人生がうまくいかない理由を学歴のせいにする類の主張として、深刻には受け止めていませんでした。
しかし、ここ数年で認識が変わりました。子どもたちの学力や勉強への姿勢、そして保護者の関わり方を日々見ていると、看過できないケースが明らかに増えています。日常的に子どもと接する教育現場からも、同様の問題提起が増えており、これは個別の問題ではなく、大手塾のシステムが生み出す構造的な問題として捉える必要があると判断しています。
教育虐待を受けている子どものサインと、よくあるケース
現場で見えてきた子どもたちのサイン
以下は当塾で実際に観察した子どもたちの様子です。複数の教育関係者から同様の報告を受けており、個別事例ではなく傾向として広がりつつあると認識しています。
これらは「勉強が苦手」という話ではありません。自発性や思考力そのものが失われていると判断される状態です。
教育虐待にあたるケース
▌ 時間的拘束の問題
中学受験に取り組む子どもの一日を整理してみます。
- 早朝:計算練習(家庭によっては)
- 午前:登校・授業
- 放課後:塾
- 夜間:学校・塾の宿題
- 休日:模試・補講
- 休暇:なし(365日継続)
- 早朝:自宅作業
- 午前:本業
- 夕方:副業・アルバイト
- 夜間:持ち帰り残業
- 休日:出勤
- 休暇:なし(365日継続)
成人であれば労働基準法違反に相当するこの状態が、子どもには「教育」の名のもとで課されています。子どもには、疲労を言語化し、環境を自分で変える力が十分ではありません。それゆえに、外部からの判断と介入が不可欠です。
▌ 指導内容の問題
子どもたちからよく聞く不満として、「自分では解けないのに、できないことを責め立てられる」というものがあります。解答を見ながら「なぜできないの?」と叱責し、「ではあなたがやってみてください」と問い返されると答えられない——そのような大人による関与が、「指導」として行われているケースが散見されます。
さらに深刻なのは、ヒントも解説もなく問題を与え、終わるまで自由を奪い、時に暴力を伴うというパターンです。適切な支援なしに問題を押しつけることで理解が深まることはありません。また、自分では解けない問題を「教えているつもり」でいる状況そのものが、教育的に不適切であり、虐待の一形態とみなされます。
よくある言い訳のパターン
「子どもが続けたいと言っているから」「やめたいと言わないから」——このような言葉で、過度な学習を正当化する保護者が少なくありません。しかしこれは、判断責任を子どもに転嫁しているにすぎません。「やめたい」と言い出せない環境を作っているのが誰であるか、立ち止まって考える必要があります。
保護者の関与を外したら、子どもが変わった
ある時、自分の学校のスケジュールすら把握できていない生徒がいました。保護者に「学校のことも勉強のことも、すべて本人に任せてください。一切口を出さないでください」とお伝えしました。
その後、その子は自分で予定を管理し、自発的に勉強に取り組むようになりました。一例にとどまらず、他の家庭でも同様の対応を試みたところ、子どもたちの学習姿勢は大きく変化しました。
この経験から当塾では、「勉強内容を変える前に、まず保護者の過度な干渉を取り除くことが、最も簡単で効果的な改善策である」と結論づけています。現在は、保護者の干渉が著しい場合、入塾をお断りするか、退塾いただく方針としています。
もちろん、保護者の方と建設的な協力関係を築けるケースもあります。ただそれは、現実には全体の1%にも満たない割合です。そして、そのような家庭のお子さんは、学力だけでなく、あらゆる面で優れた姿勢を持っている傾向があります。
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教育虐待の実行者が保護者であることは事実です。しかし、「すべての責任は家庭にある」と断じるだけでは、問題の本質を見逃すことになります。
万引きを例に考えてみましょう。実行したのが子どもであっても、本来の責任は子どもにやらせた親にあります。同様に、保護者が子どもを追い詰めているとき、その保護者自身が何かに追い詰められている構造があるとすれば、そちらにも目を向けなければなりません。
教育虐待をしている保護者の多くは、意図的に子どもを傷つけようとしているわけではありません。何かに必死になるうちに、気づかないままその状態に至っているケースが多数あります。
何が保護者をそうさせているのか
「大手塾でいいクラスに入れたい」という動機は、子どものためであれ自己顕示であれ、多くのケースに共通しています。問題は、その動機が大手塾の競争システムと結びついたとき、「手段を問わず成績を上げる」という方向に保護者を向かわせてしまう点です。
大手塾のシステムが教育虐待の温床を作り出し、保護者がその実行者になっている——これが現状の正確な構造です。
クリエートベースを設立したきっかけも、まさにここにあります。固定カリキュラムのもとで行われる意義の薄い授業、消化しきれない量の宿題、テストの繰り返し——子どもが本当に理解するための時間と環境が、そこにはありませんでした。
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今、中学受験を経験している子どもの親世代もまた、大手塾で受験を経験した世代です。その結果として生まれているのが、次のような連鎖です。
数十年変わらないシステムが作り出したこうした問題が、日本社会の停滞——「失われた30年」——の一端を担ってきたという仮説は、あながち的外れではないと考えています。主体的に考え、行動する力を削ぐ教育の連鎖が、長期的にどのような影響をもたらしてきたか。中学受験が社会問題として議論される今こそ、その問いに向き合う時機です。
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教育虐待の実行者は保護者であっても、その背景には大手塾の競争システムという構造的要因があります。保護者を断罪するだけでは問題は解決しません。システム自体を問い直し、子どもが本当に育つ環境を設計し直すことが必要です。
当塾はその観点から、保護者の干渉排除・オーダーメイド問題演習方式・宿題なしの集団個別指導という方針を独自に構築し、難関中学への合格実績につなげています。