確率の計算は難しい。場合の数の問題でなかなか得点できない。確率の学習をどう進めたらよいのか分からない。
本記事をご覧の方は、中学受験における確率や場合の数の勉強について、さまざまな疑問や悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、確率や場合の数の効果的な学習方法と計算のコツについて、以下の6点を解説します。
- 確率・場合の数の基本的な考え方
- 確率・場合の数の計算で使う主な解法
- 樹形図の正しい使い方と効率的な計算方法
- よく出題される確率の問題パターンと対策
- 確率・場合の数が苦手な人の特徴と克服方法
- 家庭学習と塾での学習の効果的な組み合わせ方
本記事をご覧いただければ、確率の問題を正確に解くための具体的な学習方法が理解できます。中学受験で確率を得点源にしたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
確率・場合の数の基本

中学受験の算数で頻出の確率・場合の数は、多くの受験生が苦手意識を持ちやすい単元です。
しかし、基本的な考え方をしっかり理解し、問題演習を重ねることで必ず得点源にすることができます。確率や場合の数を理解するためには、次の3つの基礎概念をマスターすることから始めましょう。
- 確率の意味とは
- 「場合の数」とは
- 「同様に確からしい」とは
これらの概念は、より複雑な問題を解く際の土台となります。
確率の意味とは
確率とは、ある事象が起こる可能性を分数やパーセントで表したものです。
たとえば「サイコロを振って1の目が出る確率は1/6」というように、「求めたい場合の数」を「全体の場合の数」で割って表します。身近な例では、天気予報の降水確率や、宝くじの当選確率なども確率の一種です。この「〇分の△」という表し方は、中学受験では必ず理解しておく必要があります。
確率の問題では、「少なくとも」「〜以上」といった表現がよく使われるので、これらの意味も正確に理解しておきましょう。また、確率は0から1もしくは0%から100%の間の数値で表されることも覚えておくことが大切です。
「場合の数」とは
「場合の数」とは「ある事柄が起こりうる場合の総数」のことで、確率を求める際の分母と分子になる重要な要素です。
単純なサイコロの例では、出る目は1から6までの6通りですが、実際の入試問題ではもっと複雑な条件が出題されます。たとえば「3枚のカードから2枚を選ぶ」「4人を一列に並べる」など、さまざまなパターンがあります。
正確な場合の数を求めるには、樹形図を使って漏れや重複がないように数え上げることが大切です。特に入試では、「〜の場合を除く」「条件を満たすものだけを数える」といった制限がつくことが多いため、問題文をよく読んで条件を整理することが重要です。
また、場合の数を求める際は、問題を読んで順序が関係する場合(順列)と順序が関係しない場合(組合せ)を区別できるようになることも必要です。
「同様に確からしい」とは
「同様に確からしい」とは、それぞれの事象が起こる可能性が等しいことを意味する重要な考え方です。
たとえば、公平なサイコロの各目が出る確率は全て1/6で等しく、これが「同様に確からしい」状態です。一方で、歪んだサイコロや重さの偏ったコインは「同様に確からしい」とは言えません。
中学受験の問題では、特別な記載がない限り「同様に確からしい」という前提で考えます。この考え方を理解していないと、確率の計算を正しく行うことができないので、しっかり覚えておきましょう。
入試問題では、この「同様に確からしい」という前提をもとに、さまざまな場面で確率を求める問題が出題されます。たとえば、カードを引く、玉を取り出す、さいころを投げるなどの問題では、必ずこの考え方が基本となります。
確率の求め方の基本的な考え方

確率を求めるためには、いくつかの重要な考え方があります。
- 確率の基本の求め方
- 余事象を使った考え方
- 和の法則
- 積の法則
これらの考え方は入試でもよく使われる重要な解法ですのでしっかりと理解しておきましょう。
確率・場合の数の基本の求め方
基本的な確率の求め方は、「求めたい場合の数÷全体の場合の数」です。
たとえばサイコロを投げて偶数の目が出る確率は、求めたい場合の数(2、4、6の3通り)を全体の場合の数(1から6までの6通り)で割って3/6=1/2となります。この方法は最も基本的ですが、正確に場合の数を数えることが重要です。
場合の数が多い問題では、樹形図を使って整理すると良いでしょう。また、場合の数を数える際は、問題の条件をよく読み、「順序が関係するか」「重複は許されるか」などをしっかり確認することが大切です。
さらに、答えは必ず約分して最も簡単な分数で表すことを忘れないようにしましょう。
余事象を使った考え方
余事象とは、求めたい事象の「反対の事象」のことです。たとえば「1が出る確率」の余事象は「1以外の目が出る確率」となります。
この考え方は、「少なくとも1つは」「すべて〜ではない」といった条件の問題で特に有効です。例として、「サイコロを3回振って少なくとも1回は1が出る確率」を求める場合、直接数えるのは大変ですが、余事象の「3回とも1が出ない確率」を先に求めて1から引くと比較的簡単に答えが出せます。
このように、求めたい確率を直接計算するのが難しい場合は、余事象を使うことで効率的に解くことができます。入試では、この余事象の考え方を使う問題が頻出するので、しっかりマスターしておきましょう。
和の法則
和の法則は、「AまたはBが起こる確率」を求めるときに使う考え方です。たとえば「サイコロを投げて1か2が出る確率」は、「1が出る確率(1/6)」と「2が出る確率(1/6)」を足して2/6=1/3となります。
ただし、この方法は2つの事象が同時に起こらない場合にのみ使えます。もし2つの事象が重なる可能性がある場合は、重複分を引く必要があります。具体例として「偶数または3の倍数が出る確率」では、6は偶数でも3の倍数でもあるため、単純に足すと重複して数えてしまいます。このような場合は、重なる部分を1回分引いて調整する必要があります。
入試では両方のパターンが出題されるので、問題をよく読んで判断することが大切です。
積の法則
積の法則は、「AかつBが起こる確率」、つまり複数の事象が同時に成り立つ確率を求めるときに使います。たとえば「2枚のサイコロを投げて両方とも偶数が出る確率」は、「1つ目のサイコロで偶数が出る確率(1/2)」と「2つ目のサイコロで偶数が出る確率(1/2)」をかけて1/4となります。
この方法は、それぞれの事象が独立している(お互いに影響しない)場合に使えます。ただし、カードを引く問題など、1回目の結果が2回目に影響する場合は単純に掛け算はできないので注意が必要です。特に「戻さずに引く」という条件の問題では、2回目以降の確率が変化することを忘れないようにしましょう。
入試では、独立した事象としていない事象の両方が出題されるので、問題文をよく読んで判断することが重要です。
樹形図を使った確率・場合の数の計算方法

中学受験の確率・場合の数の問題では、樹形図が非常に重要なツールとなります。樹形図を使うと、起こりうる全ての場合を漏れなく数え上げることができ、確率の計算が正確になります。ただし、場合によっては樹形図を使わない方が効率的なケースもあるため、使い分けのコツを押さえることが大切です。
確率が苦手な受験生は樹形図の理解が不十分であることが多いため、正しい手順を身につければ、確率問題の得点率は大きく向上します。
樹形図の基本的な描き方と数え方
樹形図は、左から順に枝分かれを描いていく図です。基本的な描き方には3つのルールがあります。
1つ目は、必ず左から小さい順に書くこと。これは数え落としを防ぐための重要なルールです。2つ目は、各段階で起こりうる全ての可能性を書き出すこと。1つでも見落としがあると正しい答えは導けません。3つ目は、使用済みの選択肢には印をつけること。これにより、同じものを重複して数えることを防ぎます。
たとえば、1、2、3の3枚のカードから2枚を選ぶ場合、まず1枚目は1、2、3の順に書き、2枚目は残ったカードの中から選ぶように枝を伸ばしていきます。最後に、条件に合う枝を数えることで場合の数が分かります。
このように、手順を守って丁寧に描くことで、確実に答えにたどり着くことができます。
樹形図が使える場面
樹形図が特に有効なのは、以下の3つの場面です。
1つ目は、同じ数字のカードが複数枚ある場合です。この場合、単純な掛け算では重複して数えてしまう可能性があるため、樹形図で1つずつ確認する必要があります。2つ目は、「3の倍数になる」「200以上になる」といった条件がある場合です。樹形図を描きながら条件に合うものだけをチェックしていくことで、漏れなく数えることができます。3つ目は、「1枚目の選び方が2枚目の選び方に影響する」といった、手順が複雑な場合です。
特に中学受験では、複数の条件が組み合わさった問題が多く出題されます。そのような場合も、樹形図を使えば条件を1つずつ確認しながら解くことができます。また、答えが合っているか確認する際にも、樹形図があれば1つずつ丁寧に見直すことができます。
樹形図を省略できる場面
樹形図は確実な方法ですが、時間がかかるというデメリットもあります。以下のような場合は、樹形図を省略したほうが早く解けることが多いでしょう。
1つ目は、全てのカードが異なる数字で、特別な条件がない場合です。この場合は、樹形図を使わなくても簡単に計算できます。2つ目は、求める確率が余事象を使って計算できる場合です。たとえば「少なくとも1回は表が出る確率」は、「1回も表が出ない確率」を1から引くことで求められます。3つ目は、和の法則や積の法則が使える単純な問題の場合です。
ただし、樹形図を省略する場合は、計算方法が正しいか必ず確認する必要があります。特に入試本番では、時間に余裕があれば樹形図で確認することをおすすめします。
よく出る確率の問題パターン

中学受験の確率・場合の数の問題では、特によく出題されるパターンがあります。代表的なものは次の4つです。
- さいころを使った確率
- カードを使った確率
- コイン投げの確率
- くじ引きの確率
これらの問題は基本的な形式こそ似ていますが、実際の入試ではさまざまな条件が組み合わさって出題されます。各パターンの基本的な解き方をマスターし、さらに条件が加わった場合の対処法も理解しておくことが、得点につながります。
さいころを使った確率・場合の数
さいころを使った確率・場合の数の問題は、最も基本的かつ頻出の問題パターンです。
1つのさいころを投げる場合は、全ての目が同様に確からしく、全体の場合の数は6通りとなります。ここで重要なのは、問われる条件をしっかり理解することです。たとえば「3以上の目が出る」「偶数の目が出る」「2つのさいころの和が7になる」など、さまざまな条件が考えられます。
特に2つ以上のさいころを使う問題では、樹形図や表を使って整理することが有効です。たとえば、2つのさいころの和を求める場合は、縦横の表を作って36通りの組み合わせを整理すると分かりやすくなります。
また、「少なくとも1つは6が出る」といった問題では、余事象を使って「どちらも6が出ない確率」を1から引く方法が効率的です。
カードを使った確率・場合の数
カードを使った確率・場合の数の問題は、さまざまな条件が組み合わさりやすい問題パターンです。
基本は「○枚のカードから何枚かを選ぶ」という形式ですが、「3の倍数になるように並べる」「100より大きい数を作る」など、複雑な条件が加わることも多いです。また、同じ数字のカードが複数枚ある場合は、重複に注意が必要です。
解き方のポイントは、まず全体の場合の数を正確に把握することです。たとえば3枚のカードから2枚を選ぶ場合、順序が関係するかどうかで場合の数が変わってきます。次に、条件に合う場合の数を数えます。この際、樹形図を使って1つずつ確認していくと、漏れや重複を防ぐことができます。
特に「2桁の整数を作る」といった問題では、0が含まれる場合に十の位に使えないことにも注意が必要です。
コイン投げの確率・場合の数
コイン投げの問題・場合の数は、一見単純に見えて複雑なパターンです。
1回投げる場合の確率は表と裏でそれぞれ1/2ですが、複数回投げる問題になると難易度が上がります。特によく出題されるのは、「3回投げて表が2回以上出る」「4回投げて表と裏が交互に出る」といった問題です。このような問題では、起こりうる全ての場合を整理することが重要です。
基本的な解き方としては、樹形図を使って全ての可能性を書き出す方法があります。ただし、回数が多くなると樹形図が大きくなりすぎるため、余事象を使ったり、和の法則・積の法則を活用したりする必要があります。
また、「少なくとも」「○回以上(以下)」といった表現にも注意が必要で、これらの言葉の意味を正確に理解していないと、求める場合の数を間違えてしまいます。
くじ引きの確率・場合の数
くじ引きの問題は、「戻す」「戻さない」の2種類があることが特徴です。
くじを引いて戻す場合は、2回目以降も確率は変わらないため、積の法則が使えます。一方、戻さない場合は、1回目の結果によって2回目の確率が変化するため、より複雑な計算が必要です。
たとえば、5本のくじから当たりくじ2本を引く確率は、戻す場合と戻さない場合で異なります。戻す場合は毎回2/5の確率ですが、戻さない場合は1回目が当たりなら2回目は1/4、1回目が外れなら2回目は2/4となります。
このように、くじ引きの問題では条件をしっかり確認し、適切な計算方法を選ぶことが重要です。特に入試では、複数回のくじ引きを組み合わせた複雑な問題も出題されるので、基本的なパターンを確実に押さえておく必要があります。
確率・場合の数が苦手な人の特徴

確率・場合の数を苦手とするお子さんには、共通した特徴があります。主に挙げられる特徴として次のようなものがあります。
- 全体の数え方が間違っている
- 求める場合の数の漏れがある
- 重複して数えてしまっている
- 文章題を正確に読み取れていない
これらの弱点を認識し、克服することで、確率の得点力を大きく向上させることができます。
全体の数え方が間違っている
確率を求める際の分母となる全体の場合の数を間違えてしまうケースです。
特に多いのが、条件を見落として余計なパターンまで数えてしまう間違いです。たとえば、「0から9までの数字から3桁の整数を作る」という問題で、百の位に0を使ってしまい2桁の整数も数えてしまうといった具合です。
この間違いを防ぐには、まず問題文を丁寧に読んで条件を整理することが大切です。「3桁の整数」なのか「3つの数字を並べる」のかといった微妙な違いも、場合の数に大きく影響します。
また、樹形図を描く際は、使えない数字や条件に合わない並び方を最初から除外するよう心がけましょう。さらに、求めた答えが条件に合っているか、具体例を1つ2つ書き出して確認する習慣をつけることも有効です。
求める場合の数の漏れがある
確率を求める際の分子となる、求める場合の数を正確に数えられないケースです。
特に「少なくとも1つは」「いずれか」といった条件がある場合に、パターンの見落としが起きやすくなります。たとえば「さいころを2回振って少なくとも1回は6が出る確率」を求める際に、2回とも6が出るパターンを数え忘れてしまうといった具合です。
この問題を解決するには、樹形図を使って系統的に数え上げる習慣をつけることが重要です。また、複雑な条件の場合は、余事象を使って考えるのも効果的です。「少なくとも1つは6が出る」は「1回も6が出ない」の反対と考えれば、数え落としを防ぐことができます。
さらに練習問題を解く際は、必ず答え合わせをして見落としたパターンがないか確認し、なぜ見落としたのかを振り返ることで、同じミスを繰り返さないようにしましょう。
重複して数えてしまっている
同じパターンを複数回数えてしまう間違いです。
特に同じ数字のカードが複数枚ある場合や、複数の条件が重なる場合に起こりやすいミスです。たとえば「1、1、2、3のカードから2枚を選ぶ」という問題で、1のカードを区別して考えてしまい、場合の数を多く数えてしまうケースがよく見られます。
この間違いを防ぐには、まず同じものが複数ある場合は、それらを区別せずに考えることを意識します。樹形図を描く際は、使ったカードに印をつけて、どの1を使ったのかを明確にしましょう。
また、「偶数または3の倍数」のように条件が重なる場合は、重複する部分(6など)を二重に数えないよう注意が必要です。練習の際は、具体的にどのパターンを数えたのかを書き出して、重複がないか確認する習慣をつけることが大切です。
文章題を正確に読み取れていない
問題文の条件を正確に理解できないために、的外れな解き方をしてしまうケースです。
特に「少なくとも」「○○以上」「いずれか」といった表現の意味を取り違えたり、「順序を考慮する」「数字を並べる」といった指示を見落としたりすることが多く見られます。
この問題を解決するには、まず問題文を読んだら、自分の言葉で言い換えてみることが効果的です。また、問題文に出てくる重要な表現には下線を引き、条件を箇条書きにして整理する習慣をつけましょう。
さらに、解答を導いた後で、その答えが問題の条件を全て満たしているか確認することも大切です。特に入試本番では、時間に余裕があれば必ず見直しをして、問題文の条件と自分の解答を照らし合わせるようにしましょう。
確率問題を間違えないためのコツ

確率の問題で高得点を取るには、問題のパターンを見抜き、最適な解法を選択する必要があります。ここでは以下の4点について詳しく解説していきます。
- 余事象が効果的な問題
- 条件が複数ある問題
- 積の法則と和の法則の使い分け
- 樹形図でミスしない方法
これらの判断力を養うには、典型問題を繰り返し解きながら、それぞれの解法の特徴とメリットをしっかり理解することが大切です。
余事象が効果的な問題
余事象を使うべき問題かどうかは、「少なくとも」「すべて〜でない」といった表現がヒントになります。
たとえば「3回のコイン投げで少なくとも1回表が出る確率」は、直接求めようとすると「表が1回」「表が2回」「表が3回」と場合分けが必要になり、計算が複雑になります。しかし、余事象の「3回とも裏が出る確率」を考えれば、(1/2)×(1/2)×(1/2)を1から引くだけで簡単に求められます。
この解法は、特に「繰り返し試行」の問題で効果的です。「4つのサイコロのうち少なくとも1つが6」「5回のくじ引きで1回以上当たる」といった問題では、必ず余事象を使うことを考えましょう。ただし、余事象を使う際は「1から引く」ことを忘れないよう注意が必要です。
条件が複数ある問題
複数の条件がある問題では、条件を1つずつ適用していく方法と、条件をまとめて考える方法の2通りのアプローチがあります。
たとえば「3桁の整数で6の倍数」という問題は、「3の倍数」と「偶数」の条件に分解できます。このとき、まず3の倍数を探し、その中から偶数を選ぶ方法と、最初から6の倍数を探す方法のどちらかが選択できます。
どちらの方法を選ぶかは、具体的に数を書き出してみて判断するといいでしょう。また、条件の順序も重要で、より制限の強い条件から適用していくと効率的に解けることが多いです。
特に入試では、このような複数条件の問題が頻出するので、両方のアプローチを使いこなせるようにしておくことが重要です。
積の法則と和の法則の使い分け
積の法則と和の法則の使い分けは、「かつ」「または」という言葉がヒントになります。
「AかつB」は積の法則、「AまたはB」は和の法則を使います。たとえば「サイコロを2回振って両方とも偶数」は「1回目のサイコロが偶数かつ2回目のサイコロが偶数」と言い換えられ、「かつ」なので積の法則、「1または6が出る」は「または」なので和の法則を使います。
ただし、和の法則を使う際は重複に注意が必要です。「偶数または3の倍数」のように、両方の条件を満たすものがある場合は、重複分を引く必要があります。また、積の法則は事象が独立している場合にのみ使えます。
くじ引きを戻さずに行う場合など、前の結果が次の確率に影響する場合は、単純な掛け算はできないことに注意しましょう。
樹形図でミスしない方法
樹形図を使う際のミスを防ぐには、3つのポイントがあります。
1つ目は、必ず小さい数から順に書くことです。これにより、数え落としや重複を防ぐことができます。2つ目は、各段階で使用済みの選択肢に印をつけることです。特に同じ数字のカードが複数ある場合は、どの数字を使ったかを明確にする必要があります。3つ目は、完成した樹形図を必ずチェックすることです。条件に合うものだけを数えているか、全ての可能性を書き出せているか、同じものを重複して数えていないかを確認します。
入試本番では、時間に余裕がある場合に別の解法で確認することもおすすめです。たとえば、具体的な数値を当てはめて答えが正しいか確かめる方法は、単純ですが効果的な方法といえるでしょう。
家庭でできる確率の学習方法

確率の学習は、実際に体験することで理解が深まります。家庭でもできる確率の学習方法は次のようなものが挙げられます。
- 確率が関係する遊びやゲーム
- 確率の調査や実験
- 日常生活や身の回りでの確率
ここでは、これらの具体的な学習方法をご紹介します。
確率が関係する遊びやゲーム
身近なゲームの中にも確率の感覚を養うことができる遊びがあります。
たとえば、コインを投げて表か裏かを当てるゲームでは、表か裏かのシンプルな2通りから複数回の結果を考えるゲームまでお子さんの理解度に合わせて楽しみながら学習することができます。また、すごろく遊びでは、目的の数が出る確率を考えながらゲームを進めることができます。さらに、トランプの「ハイ&ロー」では、次のカードが現在のカードより大きいか小さいかの確率を予想する力が身につきます。
これらのゲームをする際は、ただ遊ぶだけでなく、「この場合、当たる確率は何分の1かな?」といった声かけをすることで、自然と確率の計算に親しむことができます。特に小学生の場合、ゲーム感覚で学ぶことで、確率に対する苦手意識を持つことなく学習を進められます。
確率の調査や実験
実際にコインを投げたり、サイコロを振ったりする実験を通じて、確率の理解を深めることができます。
たとえば、コインを100回投げて表と裏の回数を記録し、理論上の確率(1/2)と比較する実験は、確率の本質を理解するのに役立ちます。この際、10回、50回、100回と試行回数を増やしていくと、回数が多くなるほど理論値に近づいていく様子が観察できるでしょう。
また、2つのサイコロの和を記録する実験では、なぜ7が最も出やすいのかを、実際のデータを通じて理解することができます。このような実験では、結果を表やグラフにまとめることで、視覚的な理解も深まります。
さらに、実験結果をもとに「次は何が出るだろう」と予想を立てることで、確率的な考え方が自然と身についていきます。
日常生活や身の回りでの確率
確率は私たちの身の回りのさまざまな場面で使われています。
たとえば、天気予報の降水確率は最も身近な確率の例です。「降水確率60%」とはどういう意味なのかを考えることで、確率の実用的な使われ方を理解できます。また、スポーツの勝率なども、確率の具体例として活用できます。
これらの日常的な確率を意識的に観察し、話題にすることで、確率が実生活で役立つことを実感できます。たとえば、「今日は降水確率が30%だけど傘を持っていく?」といった会話を通じて、確率に基づいて判断を行う経験を積めるでしょう。
このように、身近な例を通じて確率を学ぶことで、単なる計算問題としてではなく、実用的な知識として確率を理解することができます。
確率の学習効率を上げるには塾の活用がおすすめ

家庭学習だけでは確率の問題を攻略するのは難しいのが現状です。特に中学受験では、複数の条件が組み合わさった複雑な問題が多く出題されます。
そのため、プロの講師による体系的な指導を受けることがおすすめです。塾では、長年の指導経験から培われた効果的な解法テクニックを学べるだけでなく、お子さんの理解度に合わせた段階的な学習が可能です。
ここでは、塾での確率の学習のメリットを詳しく説明します。
ノウハウに基づいた確率特有の解き方を指導
塾では、長年の指導経験から確立された効果的な解法テクニックを学ぶことができます。
たとえば、樹形図の描き方では「必ず小さい数から順に書く」「使った数字に印をつける」といった具体的なルールを、その理由とともに学べます。また、「少なくとも1つは」という問題では余事象を使う、「AまたはB」の問題では和の法則を使うといった、状況に応じた最適な解法の選び方も身につきます。
さらに、計算の途中で陥りやすいミスや、見落としやすい条件なども、実例を通じて具体的に学ぶことができます。問題を解く際の時間配分やより早く正確に解くための方法、解答の書き方といった、入試で点数を取るために必要なテクニックも、プロの講師から直接学べる大きなメリットです。
お子さんの理解度に合わせた指導
塾では、お子さんの現在の理解度を正確に把握し、それに合わせた段階的な指導を行います。
たとえば、基本的な確率の概念が曖昧な場合は、サイコロやコインを使った具体的な実験から始めます。基本がしっかりと身についたら、少しずつ複雑な問題に挑戦していき、最終的には入試レベルの問題が解けるように導いていきます。
また、つまずきやすいポイントを個別に克服できるのも塾ならではの特徴です。「樹形図の書き方が分からない」「余事象の考え方が理解できない」といった個別の課題に対して、お子さん専用の補助プリントを用意したり、類題を使って繰り返し練習したりすることができます。
入試でよく出る確率問題への対策
入試では、単純な確率の計算だけでなく、複数の条件が組み合わさった応用問題が頻出します。
塾では、過去の入試問題を分析し、よく出題されるパターンを体系的に学ぶことができます。たとえば、「3桁の整数を作る」「少なくとも1つは条件を満たす」「AまたはBの条件を満たす」といった典型的な問題パターンを、実際の入試問題に即して練習します。
また、解答の記述方法も重要です。確率の問題では、計算過程や考え方の説明が求められることも多いため、採点者に分かりやすい解答の書き方も指導します。さらに、時間配分のコツや、ケアレスミスを防ぐためのチェックポイントなど、入試本番で高得点を取るために必要なスキルも身につけることができます。
まとめ

本記事では、中学受験における確率の学習方法と対策についてご説明しましたが、特に大切なポイントは以下の3つです。
- 確率は「求めたい場合の数÷全体の場合の数」という基本の考え方を押さえた上で、余事象や和の法則、積の法則などの解法を使い分けることが重要
- 確率の問題で間違えやすいのは、全体の数え方の間違い、場合の数の漏れ、重複した数え方、文章題の読み違いなどで、特に注意が必要
- 確率の学習では、家庭での実践的な活動と塾での体系的な指導を組み合わせることで、より効果的に力をつけることができる
確率は中学受験において頻出の単元であり、複数の条件が組み合わさった応用問題も多く出題されます。基本的な概念をしっかり理解し、さまざまな解法を使いこなせるようになることで、確実に得点源となる単元です。
本記事の内容をもとに、お子さんが効率的に確率の学習を進め、志望校合格に向けて着実に力をつけられるよう、心からお祈り申し上げます。