音楽を聴きながら勉強するメリットはあるのか。勉強中に音楽を聴いても成績は落ちないのだろうか。勉強中はどのような音楽を聴くのが良いのか。
本記事をご覧の方は、音楽を聴きながら勉強する方法について、様々な疑問や悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、音楽を聴きながら勉強する方法について、以下の4点を解説します。
- 音楽を聴きながら勉強するメリット・デメリット
- 音楽を聴きながら勉強する際の注意点
- 音楽を聴きながらの勉強に向いている科目・向いていない科目
- 勉強する際に効果的な音楽の選び方
本記事をご覧いただければ、音楽を使った効果的な勉強法について具体的に理解できます。集中力やモチベーションを上げて効率的に勉強できるよう、ぜひ参考にしてください。
目次
音楽を聴きながら勉強するメリット
「音楽を聴きながら勉強すると成績が落ちるのではないか」と心配する声をよく耳にします。音楽を聞きながらの勉強は、聴くタイミングや選曲を工夫することで以下の5つのメリットが得られます。
- モチベーションが上がる
- リラックス効果がある
- 集中力の向上が期待できる
- 記憶力が向上する
- 学習ルーティンとして利用できる
学習習慣をつけるのが難しい方や、長時間の勉強に飽きやすい方は、効率性を上げるために音楽を聴きながら勉強することを活用してみてください。
モチベーションが上がる
好きな音楽を勉強前・勉強中に聴くと前向きな気持ちになり、勉強に対するモチベーションを上げられます。人は興奮状態になると、やる気を高める「ドーパミン」が脳内から分泌されるためです。
特に勉強が苦手なお子さんは机に向かおうと思っても、つい「面倒くさい」「やりたくない」とマイナスの感情を抱くものです。しかし、勉強前・勉強中に好きな音楽を聴いて気分を上げれば、マイナスの感情が解消され高いモチベーションで学習できます。
音楽を聴いてモチベーションを上げるためには、お気に入りの曲やリズムに乗りやすい曲を選びましょう。明るい音楽は気分を上げやすく脳にも刺激を与えるため、眠気覚ましにも効果的です。
リラックス効果がある
穏やかなテンポの静かな音楽には、ストレス軽減やリラックス効果があります。これは、精神を安定させる働きを持つ「セロトニン」という脳内ホルモンが多く分泌されるためです。
厚生労働省の「e-ヘルスネット」には、セロトニンがドーパミンの分泌を制御する働きを持っていると記載されています。つまり音楽を聴くことでセロトニンが分泌されると、興奮しすぎず適度な集中力を保てるのです。
気持ちが落ち着くテンポ・曲調の音楽を選ぶと、イライラや不安な気持ちを軽減して勉強に取り組めます。学校や習い事で嫌なことがあったとき、入試直前で緊張しているときなどにリラックス効果がある音楽を聴くのがおすすめです。
集中力の向上が期待できる
勉強中に音楽を聴くと周りの余計な雑音が遮断されるため、集中力の向上も期待できます。
人の出入りが多い塾の自習室や自宅のリビングなど、場所によっては話し声や雑音が気になり勉強に集中できなくなるお子さんも多いでしょう。このような環境では、耳から入る情報量が多くなり学習内容をインプットしづらくなります。
そこで、イヤホンやヘッドホンを使って音楽を聴くと雑音が小さくなるため、周りに気を取られず集中して勉強に取り組めます。ただし、激しすぎる曲や歌詞付きの曲だと音楽に意識が向き、かえって注意力散漫になるかもしれません。
周りの音を遮断して集中力を上げるには、歌詞がない落ち着いたテンポの曲を選びましょう。
記憶力が向上する
勉強中に音楽を聴く方法は、効率的に記憶力を高められる点もメリットです。音楽と学習内容を結びつけることで、インプットした情報を思い出しやすくなります。
聴覚・視覚・嗅覚などの五感と記憶は密接に関係しています。ふとした匂いや、見覚えのある景色から過去の出来事を思い出すのはその典型例です。
音楽を聴きながら勉強すると、曲と学習内容が結びついた状態でインプットされるため、同じ音楽を聴いたときに記憶を取り出しやすくなります。音楽を聴いて学習内容を思い出すプロセスを繰り返せば、着実に記憶力を強化できるでしょう。
また音楽には、脳の働きを活性化させる「α波」という脳波の発生を促す作用もあるといわれています。α波には集中力や記憶力を高める効果があるため、さらに効率よく勉強を進められるはずです。
学習ルーティンとして利用できる
音楽を聴く習慣ができれば勉強に気持ちを切り替えやすくなり、自然と机に向かえるようになります。
学習習慣をつけるには、勉強を生活ルーティンに組み込む、学習専用スペースを設けるなど自然な流れで勉強に意識を向けるアプローチが必要です。音楽を学習ルーティンとして利用すれば「音楽を聴く→勉強する」という流れができるため、自分の意思で気持ちを切り替えなくても勉強に意識を向けられます。
その結果、自ら進んで勉強に取り組む習慣がつき、学習時間も増えるでしょう。勉強が苦手なお子さん向けに、楽しく勉強を始めるきっかけづくりとして音楽を使うのはおすすめです。
音楽を聴きながら勉強するデメリット
音楽を聴きながら勉強する方法には、以下5つのデメリットもあります。
- 集中力が低下する
- 試験本番との環境が異なる
- 暗記学習の効率が低下する
- 歌詞が気になってしまう
- ワーキングメモリーが分散される
お子さんの学習スタイルに合わなければ勉強効率が悪化するため、学習効果が出ているかを慎重に確かめた上で音楽を取り入れましょう。
集中力が低下する
人によっては、音楽を聴きながら勉強する方法が不快感、苛立ちを覚える原因になる可能性があります。音楽を聴く習慣がない場合は特に、音楽を聴きながらでも集中して勉強に取り組めているか、効率よく学習できているかをチェックしましょう。
音楽を聴きながら勉強する人が周りにいても、その方法が必ずしも自分に合っているとは限りません。勉強に音楽を取り入れる際は、お子さんと相談しながら試験的に実施するのがおすすめです。
勉強中に音楽を聴くことで集中力が続き、成績アップなどの効果が見られた場合は継続しましょう。期待通りの成果が出なければ無理に音楽を取り入れず、学習環境を変える、勉強方法を見直すなどの方法で学力の定着を図ることが大切です。
勉強に集中する方法は、以下の記事でも解説しています。音楽を使う以外の方法で学習環境を整え、集中力を高めたい方はぜひ参考にしてください。
試験本番との環境が異なる
音楽を聴きながらの勉強に慣れると、模試や入試などで実力を発揮できなくなる可能性もあります。
原則として、模試や入試の試験会場で音楽は聴けません。そのため、試験中は周りから鉛筆で書く音や紙をめくる音、息遣いや鼻をすする音などさまざまな雑音が聞こえてきます。勉強中に音楽を聴くことが当たり前になると、些細な雑音でも気になり注意力散漫になってしまうかもしれません。
音楽を聴きながら勉強するのは問題ありませんが、試験本番で実力を出し切るには定期的に音楽なしで学習する時間を設けましょう。たとえば、過去問演習を音楽なしで取り組めば試験本番と同じ環境をつくれるため、模試・入試でも周りの雑音に気を取られず集中できます。
暗記学習の効率が低下する
教科書や単語帳を音読しながら覚える暗記法を実践する際は、音楽が勉強の邪魔になってしまうため注意が必要です。
特に、歌詞付きの曲は聴覚への刺激が多くなり、脳が情報を処理しきれなくなってしまいます。音読しながら暗記するときは耳に意識を向けるため、歌詞がなかったとしてもメロディーが気になってしまい勉強効率が悪くなるでしょう。
そのため、暗記事項が大量にある社会や、漢字・慣用句・四字熟語など言葉の意味を覚える国語は音楽なしで学習するのがおすすめです。また、音声CDなどで正しい発音を覚える必要がある英語でも、耳に入れる情報量を抑えて英単語の暗記に集中しましょう。
歌詞が気になってしまう
歌詞付きの曲は自然と言葉が耳に入ってくるため、それが気になって注意力散漫になりやすい点がデメリットです。日本語の歌詞がある曲、ストーリー性が高い曲は特に集中力が落ちやすいため気をつけましょう。歌詞やメロディーを口ずさんでしまう曲も、学習内容が定着しにくくなる可能性があります。
歌詞が気になって勉強効率が悪くなる場合は、音楽なしで学習する時間を増やしたり選曲や聴くタイミングを改善したりしましょう。音楽を聴きながら勉強する目的や「志望校に合格する」「模試で◯◯点取る」など達成したい目標を明確にすることも、音楽を使って効率的に成績を伸ばすためには大切です。
「音楽を聴かなければモチベーションが上がらない」という方は、勉強前や休憩時間に好きな曲を聴いて学習意欲を高めましょう。
ワーキングメモリーが分散される
音楽を聴きながら勉強すると、作業に必要な情報を一時的に記憶する「ワーキングメモリー」の働きが分散される可能性があります。
長文を読んで問題場面を把握したり、順序立てて計算したりするためには、途中に出てくる言葉や計算式を脳内に一時保存するワーキングメモリーの働きが重要です。しかし、音楽を聴きながら勉強すると文字情報を正しく記憶できず、答えを間違えるリスクが高まります。
そのため、高い思考力が求められる長文読解や応用問題は、できる限り音楽なしで取り組みましょう。問題の内容に応じて音楽を聴く場面、聴かない場面を使い分けると効率よく集中力・記憶力を高められます。
音楽を聴きながら勉強する際の注意点
音楽を聴きながら勉強する際は、以下の4点に注意しましょう。
- 歌詞がないクラシックなどを選ぶ
- 音楽がない環境でも勉強する
- 科目や学習内容に応じて使い分ける
- 勉強前に聴くようにする
音楽を聴くタイミングや選曲を工夫することで、お子さんのやる気アップや勉強効率の向上につなげられます。
歌詞がないクラシックなどを選ぶ
勉強中に音楽を聴く際は、歌詞がないクラシックやジャズなどを選びましょう。聴覚への刺激が少なくなるため、歌詞に気を取られず集中して勉強に取り組めます。中でも、ゆったりとしたテンポの曲はリラックス効果が高く、集中力・記憶力の向上も期待できます。
本格的なクラシックやジャズ音楽に違和感を覚える方は、動画配信サービスなどで公開されている「カフェミュージック」や「作業用BGM」を活用しましょう。曲調が安定しているため聴き流しやすく、周りの雑音も遮断できます。
ただし、長時間落ち着いた音楽を聴くと眠くなる可能性があるため、やる気を出したいときはアップテンポの明るい曲を選ぶのもおすすめです。
音楽がない環境でも勉強する
試験本番に備えるため、音楽なしで勉強する日も定期的に設けましょう。音楽を聴かないと決めた日は、塾の自習室や図書館など周りに人がいる場所で勉強すると、雑音がある環境で集中力を維持する練習になります。自分以外にも勉強している人の存在を意識することで、競争心が刺激され適度な緊張感も持てるはずです。
音楽がない環境で勉強する方法は、お子さんが音楽に依存する状態を防ぐ上でも効果があります。あくまで音楽は勉強効率を高めるツールとして活用し、入試を突破するためには雑音が聞こえても集中して問題に取り組むことが重要だと覚えておきましょう。
科目や学習内容に応じて使い分ける
科目や学習内容に応じて音楽を使い分けることも、勉強効率を上げるために大切なポイントです。
簡単な計算やデータ整理が多い「算数」や「理科」は、音楽を聴きながらの勉強に向いています。一方、高い思考力や読解力、暗記量が求められる「国語」「社会」「英語」は、音楽を聴きながらの勉強にはあまり向かない科目です。算数・理科の中でも、文章問題や複雑な計算が必要になる問題は、音楽をなくすことで集中できます。
お子さんの得意・不得意に合わせて曲を変えるのも一つの手です。苦手分野の勉強前は好きな音楽を聴いて気分を上げる、得意科目はクラシックを聴いて集中力を高めるなど、音楽を使い分けることで勉強効率も高められます。
勉強前に聴くようにする
勉強中に音楽を聴くと集中できない方は、勉強前・休憩時間でモチベーション向上や気持ちの切り替えに有効活用しましょう。勉強前・休憩中に音楽を聴くときのポイントは、以下の2つです。
- 脳を活性化させて学習意欲を高める
- 興奮状態の脳を鎮めて集中力を取り戻す
「嫌なことがあった」「苦手な問題を解かなければならない」などの理由で学習意欲がわかないときは、お気に入りの音楽を聴くと明るい気持ちになり自然と机に向かえます。運動後や友達と遊んだ直後などで興奮状態にある場合は、穏やかな音楽を聴いて気持ちを落ち着けるのがおすすめです。
このように、目的に合わせて勉強前や休憩中に音楽を取り入れれば、勉強中に聴かなくても高い学習効果を得られます。
音楽を聴きながらの勉強に向いている科目・向いていない科目
音楽を聴きながらの勉強は学習意欲や集中力、記憶力の向上に効果的ですが全科目・単元の学習に向いているわけではありません。ここでは、音楽を聴きながらの勉強に向いている科目、向いていない科目を解説します。
勉強中の音楽が向いている科目 | ・算数 ・理科 |
勉強中の音楽が向いていない科目 | ・国語 ・社会 ・英語 |
音楽を聴きながら勉強する際は、学習内容に応じて選曲や聴くタイミングを工夫しましょう。
音楽を聴きながら勉強するのに向いている科目
音楽を聴きながら勉強するのに向いている科目は「算数」と「理科」の2つです。
中でも機械的な作業が多い学習では、音楽を聴くことでモチベーションや集中力を高めて効率的に勉強を進められます。
算数
単純な計算問題が多い算数は、音楽を聴きながらの勉強に向いています。教科書に載っている練習問題や基本問題など、機械的に答えを求める内容であれば、音楽を聴くことでテンポよく計算できるでしょう。
ただし、計算式に使う要素がいくつも登場する文章問題や、段階を踏んで答えを求める問題など論理的思考力が求められる場面では、音楽が邪魔になるかもしれません。音楽を聴いて聴覚を刺激すると、その分脳を働かせることになり、文字情報を十分に処理できなくなるためです。
音楽を活用して算数の勉強を効率よく進めるには、学習内容や難易度によって聴く場面・聴かない場面を分けましょう。図形を操作する問題、場合の数の問題なども高い思考力が必要になるため、音楽がない環境で取り組むのがおすすめです。
理科
理科の学習でも、単純な計算問題や実験結果の整理など、機械的な作業をする場面で音楽を聴けば勉強が捗ります。簡単な練習問題を解く際も、クラシックやヒーリングミュージックなど静かな音楽を聴くことで集中力が高まり、効率的に知識を習得できるでしょう。
「生物・物理・化学・地学」の4分野でそれぞれ聴く曲を変えれば、適度に気分転換できるため飽きることなく勉強に取り組めます。
ただ、現象の仕組みや実験の流れなどを暗記するとき、図やグラフを読み解いて答える問題に挑戦する際は、脳の働きを集中させるために音楽なしで勉強するのがおすすめです。
音楽を聴きながら勉強するのに向いていない科目
音楽を聴きながら勉強するのに向いていない科目は、「国語」「社会」「英語」の3つです。
国語・社会・英語を効率よく勉強するには、音楽なしで集中力を高めたり知識を定着させたりする方法をマスターしましょう。音楽を活用する場合は、勉強前に好きな曲を聴いてモチベーションを上げるのがおすすめです。
国語
国語は物語文や説明文など長い文章を読んで答える問題が多く、読解力や思考力が求められるため、音楽を聴きながらの勉強にはあまり向いていません。特に歌詞付きの曲を選ぶと、視覚と聴覚から異なる言葉が入ってしまい混乱する可能性があります。
音楽なしで国語の勉強をする際は、以下3つの方法を実践しましょう。
- 漢字や慣用句、ことわざを毎日少しずつ覚える
- さまざまな記述式の問題を解いて文章を書くことに慣れる
- 読書習慣をつける
毎日短時間でも暗記をして語彙を増やせば、長文をスムーズに読めるようになり正答率を上げられます。記述式の問題を解く、読書習慣をつけるなどの方法でさまざまな文章に慣れると、正しい書き方・読み方が身につき成績アップにつながるはずです。
社会
社会は年号や地名、歴史上の出来事など覚えることが膨大にあります。そのため、音楽がない環境で暗記に取り組むのが効率よく勉強するためのコツです。具体的には、地理・歴史・公民の3分野それぞれで以下のポイントを意識しましょう。
地理 | ・地図パズルやクイズで楽しみながら覚える ・復習を繰り返して少しずつ知識量を増やす |
歴史 | ・出来事が起こった背景や関係する人物をセットで覚える ・覚えた知識を自分なりの言葉で文章にまとめる |
公民 | ・日常生活と結びつけて覚える ・新聞やニュースを見て時事問題を理解する |
暗記したあとは復習を繰り返し、覚えた知識を何度も思い出すことで着実に記憶力を高められます。
英語
英文読解や英作文など、読解力や記述力が求められる問題が出題される英語も、音楽を聴きながらの勉強に不向きだといえます。リスニング問題や英単語の暗記では聴覚をフル活用するため、歌詞付きに限らずクラシックやジャズなど歌詞がない音楽も不要です。
英語の学習効果を上げるためには、以下2つの方法を意識しましょう。
- 声に出して英単語を覚える
- 志望校の出題傾向に合わせた問題演習を積む
中学受験の英語では、リスニングの出題が多い傾向にあります。そのため、英単語を暗記するときは声に出して発音もセットで覚え、リスニング問題にも対応することが大切です。また、英語の入試方式は学校によって差があるため過去問から出題傾向を把握し、それに合わせた問題演習を行いましょう。
勉強する際に効果的な音楽の選び方
音楽を使って学習効果を高めるには選曲も重要です。ここでは、勉強中に聴く音楽を選ぶときのポイントやおすすめの音楽ジャンルを解説します。
学習内容やお子さんの気分に合った曲をすぐに選べるよう、幅広いジャンルの音楽を取り揃えておきましょう。
音楽を選ぶ時のポイント
勉強中に聴く音楽を選ぶときのポイントは、以下の6つです。
- 穏やかなテンポの曲を選ぶ
- 自分の好みに合う音楽を選ぶ
- 初めて聴く曲は避ける
- 音量に気をつける
- 目的に合わせて選ぶ
- 個人差があることに気をつける
「勉強の邪魔にならないか」だけでなく、曲を聴いたときの心地よさや音量なども配慮しましょう。
穏やかなテンポの曲を選ぶ
勉強中に音楽を聴いてリラックス状態をつくり、集中力を高めるには穏やかなテンポの曲を選ぶのがおすすめです。
一般的に、人が心地よく感じるテンポは心拍数と同じ速さだといわれています。個人差はあるものの、1分間に刻む拍の回数を示す「BPM」で人の心拍数を表したときの速さは「BPM=60〜90」です。適度にリラックスした状態で勉強に取り組むには「BPM=60〜90」を目安に、お子さんが心地よいと感じる曲を選びましょう。
具体例として、穏やかなテンポの有名な音楽を以下に挙げます。
- カノン(ヨハン・パッヘルベル作曲)
- G線上のアリア(バッハ作曲)
- 愛の挨拶(エドワード・エルガー作曲)
「BPM=60〜90」でなくても、静かな曲調で心地よいと感じる音楽であればリラックス効果を得られる可能性があります。お子さんにとってどのような音楽が心地よく感じるか、動画・音楽配信サービスなどで試しに聴いてみるといいでしょう。
自分の好みに合う音楽を選ぶ
自分の好みに合う音楽を選ぶことも、集中力やモチベーションを高めるのに効果的です。好きな音楽を聴くと脳が活発に働き、やる気を高めるドーパミンの分泌が促されます。その結果、前向きな気持ちで勉強に取り組めるでしょう。
勉強前に音楽を聴く場合は歌詞付きの曲でも問題ありません。ただし、強弱の変化が激しかったり歌詞に感情を揺さぶられたりすると、注意力散漫になる可能性があるため気をつけましょう。
曲を選ぶ際は、お子さんの好みを尊重することが大切です。音楽を聴くことで勉強効率が悪くなった場合は、お子さんと相談しながら選曲や聴くタイミングを見直しましょう。
初めて聴く曲は避ける
お子さんが知らない音楽を勉強中に聴くと、曲の内容に意識が向いて集中できなくなる可能性があります。そのため、音楽を選ぶときはお子さんが初めて聴く曲をできる限り避けましょう。
とはいえ、小学生のお子さんが聴いたことのある曲は数が限られてしまいます。クラシックやジャズを一度も聴いた経験がないお子さんもいるかもしれません。勉強で使う音楽を探した結果、ジャンルが偏ってしまう場合は初めて聴く曲でも気にせずお子さんに合うものを選びましょう。
聴き慣れた音楽のほうが集中できる場合は、お子さんと相談しながら勉強に適している曲を選び、学習内容に合わせて取り入れてみてください。
音量に気をつける
勉強中に音楽を聴くときは自分の声が自然に聞こえ、周りの話し声や雑音も小さく聞こえる程度の大きさを目安に音量を調整しましょう。
音量が小さすぎると、周りの雑音を遮断できない上に音楽と混ざって勉強の邪魔になる可能性があります。また、音量が大きすぎても音楽に気を取られる原因になり、簡単な練習問題や機械的な作業でも集中できない可能性があります。さらに、周りの音を完全に遮断した状態での勉強に慣れると、試験本番の静かな環境に落ち着かず、自分の実力を発揮するのが難しくなるでしょう。
音楽を聴きながら勉強する際は、選曲だけでなく音量にも配慮することで試験本番にも対応できる最適な学習環境をつくれます。
目的に合わせて選ぶ
音楽を目的に合わせて選ぶと、毎回同じ曲を聴くよりも高い学習効果を得られます。お子さんの気分やモチベーションは日々変わるものです。常にベストな状態で勉強するためには、幅広いジャンルの曲を用意し、気分や時間帯に応じて選びましょう。
たとえば、朝の時間帯に爽やかな曲を聴きながら勉強すると明るい気持ちになりやすく、高いモチベーションで一日を迎えられます。夜の時間帯は穏やかなテンポの静かな曲を聴くことで、リラックス効果や集中力・記憶力の向上が見込めます。寝る前に聴けば、睡眠の質も良くなるでしょう。
練習問題をスムーズに解きたい場合はテンポの良い曲、苦手分野を勉強するときは明るい曲など、学習内容に応じて音楽を変えるのもおすすめです。このように、音楽を目的に合わせて選べば、静かな環境で勉強するよりも効率よく成績アップを目指せます。
個人差があることに気をつける
周りの人におすすめされたからといって、その音楽が必ずしも自分に合うとは限らないことも理解しておきましょう。
「リラックス効果がある」「集中力やモチベーションが高まる」と感じる音楽は、人によってさまざまです。優れた音楽でも、お子さんの勉強にプラスの影響を与えなければ意味がありません。そのため、音楽を選ぶときは周りの意見を参考にしつつ、最終的にはお子さんの意思を尊重して勉強効率を上げるのに適切な曲を見つけましょう。
音楽の有無に関わらず、お子さんが集中力を高めやすい学習環境を整えることは親御さんの重要な役割です。お子さんと積極的にコミュニケーションを取りながら定期的に勉強方法を見直し、志望校合格に向けて着実に成績を伸ばしましょう。
おすすめの音楽ジャンル
勉強中に聴く音楽ジャンルは、以下の4つがおすすめです。
- 環境音・ヒーリングミュージック
- クラシック
- ジャズ
- ピアノ音楽
周りの雑音を遮断し、適度に聴き流せる音楽であれば集中力が続き、効率よく知識を定着できます。
環境音・ヒーリングミュージック
風の音や水が流れる音、小鳥のさえずりなどの環境音は、強弱の変化がほとんどなく自然の中にいる気分を味わえます。心地よい音が流れ続けるため、勉強中の不安やストレスを軽減して高いリラックス効果を得られるのがメリットです。また環境音には、一定ではないリズム感覚を表す「1/fゆらぎ」によって人の心を落ち着かせる効果があります。
ヒーリングミュージックとは、心理的な安定や癒やしを促すために作られた音楽です。瞑想やヨガで使われることが多く、心と体のバランスを整えるのに役立つといわれています。ストレスが溜まっているときや、受験に対する焦り・不安を感じたときにヒーリングミュージックを聴くと気分が落ち着き集中力を取り戻せるはずです。
クラシック
クラシック音楽には歌詞がなく、柔らかい音色も流れるため落ち着いて勉強に取り組めます。勉強にクラシック音楽を取り入れる際は、以下の特徴がある曲を選びましょう。
- 楽器の数が少ない曲
- 安定した音の大きさが続く曲
オーケストラや吹奏楽など、楽器の数が多い演奏形態は壮大な曲が多く聴覚への刺激が強くなりがちです。そのため、勉強をするときはピアノやバイオリンの独奏など、楽器の数が少ないクラシック音楽を選んで聴覚情報を減らしましょう。
強弱の変化が激しい曲も、音の大きさに気を取られたり耳が疲れたりして勉強を妨げる可能性があります。音楽を聴いて集中力を高めるには音量が安定した曲を選び、心地よい音を耳に入れながら勉強に意識を向けることが大切です。
ジャズ
ジャズもリラックス効果がある音楽の一つです。ジャズにはテンポが速い曲調でもゆったり聴ける特性があるため、精神的な緊張と緩和のバランスを取った状態で勉強を進められます。オーケストラや吹奏楽に比べて楽器の数も少ないため、脳に強い刺激を与える心配もありません。
ジャズを勉強に取り入れる際は、場面に応じてクラシックや環境音など他の音楽と使い分けるのがおすすめです。勉強中はクラシック、休憩時間はジャズのように曲を変えると気分がリフレッシュされ、高いモチベーションを維持できます。
ピアノ音楽
馴染みのある曲でモチベーションや集中力を高めたい場合は、ピアノ音楽を活用しましょう。
クラシックやヒーリングミュージック、ジャズにも勉強効率を高める効果はあります。ただ、聴いたことのない音楽に違和感を覚えると、勉強に取り入れても期待通りの効果が得られないかもしれません。そこで、お子さんがストレスなく勉強するためにおすすめの音楽は「ピアノカバー曲」です。
既存の楽曲をピアノで演奏した「ピアノカバー曲」であれば、歌詞がないため馴染がある曲でも注意力散漫になる場面を減らせます。ピアノ音楽の場合も「テンポは速すぎないか」「強弱の変化は激しくないか」などの確認は忘れず行いましょう。
まとめ
本記事では、音楽を聴きながら勉強する方法についてご説明しましたが、特に大切なポイントは次の3つです。
- 音楽を聴きながら勉強する方法は、学習意欲や集中力、記憶力の向上に効果的
- 音楽を聴きながら勉強する際は、歌詞がない穏やかなテンポの曲を選び、科目や学習内容に応じて使い分けると良い
- 機械的な作業をするときは音楽を聴き、高い思考力が必要なときは音楽なしで問題に取り組むと効率よく勉強できる
音楽の効果には個人差があるため、勉強効率が悪化する場合は無理に続けず、音楽なしで高い学習効果を得られる方法を実践しましょう。
本記事の内容をもとに、親御さんやお子さんにとって最適な勉強方法を見つけ、志望校合格に向けて着実に成績を伸ばせるよう、心からお祈り申し上げます。