公立中高一貫校と私立中学の違いは何か。公立中高一貫校に進学するメリットはあるのか。どのように対策したら公立中高一貫校に合格できるのか。
本記事をご覧の方は、公立中高一貫校の仕組みや受検対策について、さまざまな疑問や悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
本記事では、公立中高一貫校の概要や入試に向けた対策について、以下の5点を解説します。
- 公立中高一貫校とは
- 公立中高一貫校の種類
- 公立中高一貫校のメリット・デメリット
- 公立中高一貫校に向いているお子さん
- 公立中高一貫校の受検対策や塾に通う時期
本記事をご覧いただければ、公立中高一貫校を進学先の一つとして候補に入れ、効率的に受検対策を進められるようになります。
お子さんの学力や個性に合った中学校を選べるよう、ぜひ参考にしてください。
目次
公立中高一貫校とは
公立中高一貫校は中高6年間の一貫教育を実施している学校で、国や地方公共団体が運営しています。公立中高一貫校への進学を考える際は、次の3つを基礎情報として押さえましょう。
- 公立中高一貫校と公立中学の違い
- 公立と私立の中高一貫校の違い
- 公立中高一貫校の受検内容
公立中学や私立中高一貫校との違いも踏まえ、どの学校がお子さんに適しているのかを検討してみてください。
公立中高一貫校と公立中学の違い
公立中高一貫校と公立中学の主な違いは、入学方法と高校受験の有無、カリキュラム編成です。公立中高一貫校と公立中学の違いを以下の表にまとめました。
公立中高一貫校 | 公立中学 | |
入学方法 | 入学者選抜を受ける必要がある | 試験・検査を受けなくても入学できる |
高校受験の有無 | 原則不要 | 必要 |
カリキュラム編成 | 大学受験を見据えて先取り学習を実施する学校もある | 学習指導要領の範囲内におさまっている |
公立中高一貫校に進学するためには、適性検査や作文などの入学者選抜を通過しなければなりません。ただ、出題範囲は小学校で習うレベルに限定されるため、基礎学力を固めて計画的に対策すれば十分に合格を目指せるでしょう。
公立中高一貫校と公立中学は、どちらも国・地方公共団体が運営しており、無償で授業を受けられる点が共通しています。
公立と私立の中高一貫校の違い
公立・私立の中高一貫校の違いは、入試方法と授業料の2つです。私立中学への進学も検討している方は、どのような違いがあるのかを把握しましょう。
【公立・私立中高一貫校の入試方法】
公立 | 適性検査や作文で総合的な能力を評価する |
私立 | 「国語・算数・社会・理科」の4教科を中心とした学力試験を行う |
【公立・私立中高一貫校の授業料(2021年度調査結果より)】
公立 | 中学校の3年間は無償 |
私立 | 年間平均47万6,159円 |
公立中高一貫校の入試方法は適性検査が基本です。そのため、公立中高一貫校の入学者選抜は一般的に「受検」と表現されます。
授業料は1年間で約50万円の差があることから、公立中高一貫校はコストを抑えながら大学受験を見据えた一貫教育を受けられる点が魅力だといえます。
公立中高一貫校の受検内容
公立中高一貫校の受検内容は、以下の4つです。
- 報告書(調査書)
- 適性検査
- 作文
- 面接
配点比率は学校によって異なりますが、どれも合否に影響を与える重要項目となるため受検内容を詳しくチェックしましょう。
報告書(調査書)
報告書(調査書)とは小学校の担任に依頼して書いてもらう、お子さんの成績や出欠状況に関する書類です。報告書に記載する成績や行動記録は5〜6年生の2年間、もしくは6年生の1年間の内容が対象になります。
ただし、千代田区立九段中等教育学校のように4〜6年生の3年間を対象とする学校もあるため、志望校の募集要項を事前に確認しておきましょう。
報告書だけで合否が決まるとは言い切れませんが、合格の可能性を高めるには授業に前向きな姿勢で参加し、テストでも点数を取って高い成績を維持する必要があります。また、報告書の作成には手間がかかるため、早い時期に依頼して担任の負担が大きくならないよう配慮することも大切です。
適性検査
公立中高一貫校は、学力試験の代わりに適性検査を実施して受検者の総合的な能力を評価します。
適性検査では、統計資料や会話文を読み取って自分の考えを文章で書く、計算で答えを導くなど教科横断的な思考力や判断力が問われる傾向があります。学校によっては、国語や英語の聞き取り問題が出題される場合もあります。
出題範囲は小学校の教科書レベルにおさまるものの、習得した知識を組み合わせて答える問題が多いため、受検対策では基礎学力の定着に重点を置くことが大切です。小学校では目に触れる機会が少ない長文問題や資料・データを読み解く問題にも慣れておけば、入試本番でも好成績を取れるでしょう。
作文
入学者選抜で400〜450字程度の作文を課す公立中高一貫校もあります。たとえば、大阪府の公立中高一貫校は作文の課題について以下のように記載しています。
大阪府立咲くやこの花中学校 | 300字程度とし、志願者の志望動機や興味・関心等をみる。 |
大阪府立富田林中学校 | 400 字程度とし、中高一貫校で6年間学び続けていくことができる意欲・適性及び自らの考えや意見を論理的かつ適切に表現する力をみる。 |
参考元:令和7年度 大阪府立中学校入学者選抜実施要項丨大阪府
上手な作文を書くためには、練習量をこなすことが重要です。指定文字数やテーマを意識し、完成後は添削を受けることで構成力や表現力が磨かれます。
面接
一部の公立中高一貫校では、個人面接や集団面接、親子面接を課す場合もあります。面接の特徴、所要時間の目安は以下のとおりです。
面接の種類 | 特徴 | 所要時間の目安 |
個人面接 | ・受検生が1人で面接を受ける ・入室後に受検番号・氏名を伝え面接官の質問に答える | 5〜20分 |
集団面接 | ・5人程度の受検生と同時に面接を受ける ・1人ずつ質問に答える、受検生同士で話し合うなどの形式がある | 20分(1人あたり4〜5分) |
親子面接 | ・受検生が保護者と一緒に面接を受ける ・受検生と保護者が別々に受ける場合もある | 5〜30分 |
上記を参考に面接練習を重ね、本番で緊張しないためにも場の雰囲気に慣れておきましょう。
公立中高一貫教育の種類
公立中高一貫校は、学校の運営方法によって以下の3種類に分けられます。
- 中等教育学校
- 併設型中学校・高等学校
- 連携型中学校・高等学校
学校ごとの違いを理解し、志望校選びの参考にしてください。
中等教育学校
中等教育学校とは、中高6年間を「前期課程」と「後期課程」に分け、1つの学校として一貫教育を行う学校です。前期課程を終えた生徒は、エスカレーター式で後期課程に進みます。
中等教育学校は中高6年間を見据えたカリキュラム編成で、大学受験に向けた先取り学習や特定のスキルを重視した教育を受けられるのが特徴です。
ただ、後期課程で追加の生徒募集がなく、同じクラスメイトと一緒に6年間過ごすことになるため、人間関係や環境面で刺激を受けにくい点がデメリットに感じることもあります。
関西の代表的な中等教育学校には、兵庫県立芦屋国際中等教育学校があります。
併設型中学校・高等学校
併設型中学校・高等学校は、同じ設置者が中学校と高校を運営する形態の学校です。県が県立中学校と県立高等学校を、市が市立中学校と市立高等学校を運営している場合が併設型に該当します。
併設型は中学校と高校に分けられていますが、中等教育学校と同じく高校課程に進学する際の試験は不要です。ただ、併設型では高校課程で外部からの入学者を受け入れている場合があります。
中等教育学校と異なり、高校で新しい仲間と刺激を受け合いながら新鮮な気持ちで過ごせるのは併設型のメリットです。
関西にある併設型の公立中高一貫校には、大阪府立富田林中学校、兵庫県立大学附属中学校、京都府立洛北高等学校附属中学校などがあります。
連携型中学校・高等学校
連携型中学校・高等学校とは、設置者が異なる中学校と高校で連携を取りながら6年間の一貫教育を実施する学校です。関西にある連携型中学校・高等学校では、それぞれ以下の学校や設置者が連携して生徒を育てています。
中学校(設置者) | 連携している高等学校(設置者) |
十津川村立十津川中学校(奈良県十津川村) | 奈良県立十津川高等学校(奈良県) |
和歌山大学教育学部附属中学校(国立大学法人和歌山大学) | 和歌山県立星林高等学校(和歌山県) |
能勢町立能勢中学校(大阪府豊能郡能勢町) | 大阪府立豊中高等学校能勢分校(大阪府) |
連携型の公立中高一貫校は、高校進学の際に面接・実技などの入学者選抜を受けるのが特徴です。
公立中高一貫校のメリット
公立中高一貫校には、以下5つのメリットがあります。
- ゆとりある一貫教育が受けられる
- 効率的に大学受験準備ができる
- 特色ある教育プログラムが多い
- 周りの学力レベルが近い
- 私立に比べて学費が安い
学力にとらわれずに個性や長所を伸ばしたい方、学費を抑えながら余裕を持って大学受験の準備を進めたい方には公立中高一貫校がおすすめです。
ゆとりある一貫教育が受けられる
公立中高一貫校には高校受験がなく、時間的な余裕が生まれやすいため自分の好きなことに打ち込める点がメリットです。高校受験の勉強に充てる時間を部活動や趣味、得意教科の探求に使うことで充実した学校生活を送れます。
公立中高一貫校の授業についていけない、ハイレベルな高校に行きたいなどの理由による外部進学も可能です。ただし、外部進学する場合は以下の2点に注意しましょう。
- 外部受験で不合格になっても元の学校には戻れない
- 外部受験に向けた指導を学校で受けられない
目的を明確にして慎重に対策を進めることが、後悔なく外部進学するためのポイントです。
効率的に大学受験準備ができる
公立中高一貫校は6年間の連続したカリキュラムが用意されており、公立中学に比べて教科書の学習が早く終わる傾向にあります。その分、大学受験に向けた勉強も早い時期から開始できるため、効率的に入試対策を進められて難関大学の合格を目指しやすい点がメリットです。
たとえば、京都府立洛北高等学校附属中学校・高等学校では、令和5年度における卒業生267名のうち、東京大学に3名、京都大学に12名が現役合格しています。また、兵庫県立芦屋国際中等教育学校も慶應義塾大学や明治大学など、難関私立大学への合格者を輩出しています。
学費を抑えながら難関大学を目指したい方には、公立中高一貫校への進学が良い選択肢となるでしょう。
参考元:「16期生(令和5年度)進路結果」(PDF)、京都府立洛北高等学校・洛北高等学校附属中学校 | 教育内容 : 卒業生 大学等合格者数一覧
特色ある教育プログラムが多い
多くの公立中高一貫校では、グローバル人材育成や理系教育など特色ある教育プログラムを展開しているため、中学生のうちから興味がある分野の専門性を高められます。
たとえば、兵庫県立大学附属中学校で独自に設定している教科は「探求科学」「コミュニケーション」の2つです。発展的な観察・実験や生徒同士のディベートを通して、自然科学に対する関心、積極的に他者とかかわろうとする力を育成しています。
学校独自のカリキュラムがお子さんの個性や興味にマッチすれば、学ぶことの楽しさを実感し、入学後も学習意欲や成績を継続的に伸ばせるでしょう。
参考元:教育内容 – 兵庫県立大学附属高等学校|兵庫県立大学附属中学校
周りの学力レベルが近い
公立中高一貫校には、適性検査を通過した学力レベルの近い生徒が集まります。そのため授業の難易度やスピードが自分に適しており、無理なく勉強についていける点が公立中高一貫校のメリットです。
公立中高一貫校は6年間の一貫教育を前提としているため、高校で急激に授業の難易度が上がったり周りについていけず成績が落ちたりする心配もありません。
同級生の学力が近いと、定期テストや模試で仲間と切磋琢磨し合いながら競争意識も高められます。「友達よりも良い成績を取りたい」「周りに負けたくない」という競争心が学習意欲にプラスの影響を与え、高い成績の維持につながるでしょう。
私立に比べて学費が安い
公立中高一貫校は、私立中学に比べて学費が安い点もメリットです。公立中高一貫校の場合、中学卒業までは義務教育に該当するため基本的に授業料はかかりません。私立中学も義務教育に当たりますが、学校の運営費用としてさまざまなお金が必要となります。
文部科学省が調査した、2021年度における公立・私立中学の授業料を含めた学校教育費の違いは以下のとおりです。
参考元:令和3年度子供の学習費調査の結果を公表します丨文部科学省
上の図から、公立・私立中学におけるトータルの学校教育費には8倍以上の差が開いているとわかります。一貫教育のメリットを受けたいものの、学費面で不安のある方は公立中高一貫校への進学を選択肢に入れましょう。
公立中高一貫校のデメリット
公立中高一貫校には、以下に挙げる5つのデメリットも存在します。
- 倍率が高く1人1校しか受けられない
- 高校受験がないため、中だるみしてしまう
- 学力差が拡大する可能性がある
- 人間関係、人脈が広がらない
- 特別な受検対策が必要になる
上記のデメリットも踏まえた上で、公立中高一貫校への進学が最適な選択なのか再度検討してみてください。
倍率が高く1人1校しか受けられない
公立中高一貫校は、生徒や保護者にとってさまざまなメリットがあります。しかし、人気や倍率が高く簡単には合格できません。
例として、京都府・大阪府にある公立中高一貫校の2024年度における入学者選抜の倍率を紹介します。
公立中高一貫校 | 倍率 |
京都府立洛北高等学校附属中学校 | 2.43 |
大阪府立咲くやこの花中学校 | 3.95 |
大阪府立富田林中学校 | 2.79 |
参考元:令和6年度 京都府立中学校入学者選抜合格状況について丨京都府教育委員会
参考元:令和6年度大阪府立中学校入学者選抜の志願者数について丨大阪府
また、「公立中高一貫校は1人1校までしか受検できない」というルールも合格のハードルを上げる要因の一つです。どうしても中高一貫校に進学したい場合は、私立中学との併願も視野に入れましょう。
高校受験がないため、中だるみしてしまう
公立中高一貫校には高校受験がないため、勉強の必要性を感じにくく中だるみする可能性が高くなります。勉強に対するモチベーションを維持するためには、以下のポイントを意識しましょう。
- 新しい目標を設定する
- 学習塾を利用する
高校受験がないと、何を目標に勉強を頑張るのかわからなくなってしまいます。そこで「定期テストで◯◯点を取る」「模試で◯位以内に入る」などの新しい目標を設定すると、やるべきことが明確になり学習意欲を高められます。
学習塾を利用し、他校の生徒と切磋琢磨し合える環境をつくるのもおすすめです。学習塾では、大学受験を見据えた進路指導や学習管理も行ってくれるため、常に先の目標を意識して高いモチベーションを維持できます。
学力差が拡大する可能性がある
学力レベルの近い生徒が集まる公立中高一貫校は、授業の難易度やペースが自分に適している点がメリットです。しかし、勉強を怠けて疑問点を解消しなければ周りの生徒と学力差がつき、遅れを取る可能性があるため注意しましょう。
授業を受けるときは、以下の方法を実践することが成績を維持する上で大切です。
- 予習・復習を習慣づける
- 授業内容を理解しながらノートを取る
事前に教科書を見る、授業のノートを見直して疑問を解消するなど予習・復習の習慣をつけると、学習内容を理解し知識が定着します。授業中は教師の話に意識を向け、重要なポイントを理解しながらノートを取ることで学びが深まるでしょう。
人間関係、人脈が広がらない
高校で追加の生徒募集をしない公立中高一貫校は、人間関係や人脈を広げにくい点がデメリットです。新しい刺激や環境の変化が少ないため、学習意欲を高めるのが難しく中だるみにつながる可能性もあります。
公立中高一貫校でも幅広い人間関係を築き、協調性やコミュニケーション能力を伸ばすためには、学習塾や習い事で他校の生徒とつながりを持つのがおすすめです。さまざまなタイプの生徒と関わることで考え方や価値観が広がり、多角的な視点を持てるようになります。
また、高校で追加の生徒を募集している併設型・連携型の公立中高一貫校に進学するのも一つの手です。高校で生徒数が多くなれば大学受験に向けて競争意識が高まり、モチベーションを維持しながら勉強に臨めるでしょう。
特別な受検対策が必要になる
公立中高一貫校の適性検査では、教科横断的な思考力や表現力が求められます。そのため、学校の授業や家庭学習だけで対応するのが難しく、特別な受検対策が必要となるでしょう。
独学での受検対策も可能ですが、以下のように親御さんの負担が大きくなりがちです。
- 適性検査に特化した問題集を解いて親御さんが丸付けする
- 作文問題に取り組み親御さんが添削する
- 親御さんが面接官となって面接練習をする
共働きで時間に余裕がない、志望校のレベルが高く教えるのが難しいなどの場合は、学習塾や家庭教師の利用を検討しましょう。お子さんの学力や志望校の出題傾向に合わせた的確な指導を受けることで、無理なく効率的に合格を目指せます。
公立中高一貫校に向いているお子さん
公立中高一貫校に向いているお子さんには、以下の特徴があります。
- リーダーシップを発揮できる子
- 集団生活が好きで協調性がある子
- 好奇心旺盛で探究心がある子
- 基礎学力が身についていて文章力のある子
- 特技や習い事に熱心な子
公立中高一貫校のメリットが多くても、校風や教育スタイルが合わなければお子さんの負担が大きくなるだけです。上記を参考に、お子さんの性格や能力が当てはまるかチェックしてみてください。
リーダーシップを発揮できる子
多くの公立中高一貫校は、教育目標に「リーダー育成」を掲げる傾向があります。そのため、クラスや習い事でリーダー的存在となるポジションにつき、集団をまとめた経験のあるお子さんは公立中高一貫校に向いているでしょう。
リーダーシップを発揮した経験のないお子さんは、以下の方法を実践することで決断力や行動力を伸ばせます。
- 自分で物事を決める機会を増やす
- チームプレーのスポーツをする
食事や洋服などの些細な要素でも、自分の意志で物事を決めて行動する機会を増やせばリーダーに必要な決断力、意見をわかりやすく伝えるスキルを養えます。仲間と協力するスポーツにも積極的に取り組むことで、自分の役割を果たす責任感も高められるでしょう。
集団生活が好きで協調性がある子
集団生活が好きで協調性があるお子さんも、公立中高一貫校に向いています。
公立中高一貫校は、6年間同じクラスメイトと学校生活を送るのが一般的です。学校行事や「総合的な学習の時間」に力を入れている公立中高一貫校では、仲間と協力して学習を進める場面も多いでしょう。
協調性があるお子さんは、相手目線に立った上で物事を考え自分の意見を伝えられます。そのため、学校生活で問題に直面しても、仲間と適切にコミュニケーションをとりながら課題解決に向かえるでしょう。仮にケンカをしても、すぐに気持ちを切り替え行動することで大きなストレスを溜めず、周りの環境に適応できます。
好奇心旺盛で探究心がある子
何事にも興味を持って取り組む好奇心旺盛なお子さんは、学力を伸ばしやすく適性検査でも有利になります。
適性検査で好成績を取るには、統計資料や写真・図から情報を整理し、的確な答えを導く探究力や思考力が必要です。そのため、日頃から「なぜ」「どうして」と疑問を持ち、自ら進んで答えを求めるクセがついているお子さんであれば、適性検査でも難なく解決の糸口を見つけられるでしょう。
お子さんの好奇心や探究心を伸ばすためには、好きなことに取り組ませながら徐々に興味の幅を広げるのがおすすめです。学ぶ楽しさを実感できれば学習意欲も高まり、各教科の総合的な成績アップにつながります。
基礎学力が身についていて文章力のある子
教科書レベルの基礎学力が身についており、自分の考えをわかりやすく表現できる文章力があるお子さんは、入学者選抜を通過できる可能性が高いでしょう。
公立中高一貫校の適性検査では、小学校で習う範囲が出題されるケースがほとんどです。単なる知識問題に限らず、統計資料やグラフなどを読み取り、自分の考えを書く問題も多く出題されます。作文が課された場合は、自分の経験や意見を決められた文字数で簡潔に書かなければなりません。
そのため、教科書の問題をスムーズに解ける程度の学力があり、基礎知識を活用して自分の考えを文章化できるお子さんは総合的な能力が高いとみなされ、ライバルとも差をつけられます。
特技や習い事に熱心な子
特技や習い事など、勉強以外で熱心に取り組んでいる活動があるお子さんは面接で高い評価を受けやすく、入学後もさまざまな活動に挑戦し個性を伸ばせます。
公立中高一貫校の面接では、趣味や特技の有無、小学校生活で頑張ったことを聞かれる場合があります。このとき、自分の得意を伸ばすために一生懸命取り組んだ活動をアピールすると、集中力の高さや粘り強さが評価され面接官に好印象を与えられるでしょう。
また、熱中できる特技や習い事があれば高校受験に充てる時間を有効活用できるため、勉強以外のスキルを伸ばしたり将来の目標に大きく近づけたりします。
公立中高一貫校の受検対策
公立中高一貫校の受検対策をするときは、以下の5つのポイントを押さえましょう。
- 小学校の教科書内容を徹底的に学習する
- 社会問題への関心を高める
- 記述力・表現力を強化する
- 志望校の過去問を繰り返し解く
- 教科横断的な思考力を養う
公立中高一貫校の入学者選抜に教科別の学力試験はありません。ただ、適性検査では教科横断的な能力が問われるため教科書レベルの知識をつけ、思考力・表現力を磨く必要があります。
小学校の教科書内容を徹底的に学習する
適性検査の問題に対応するために、小学校の教科書内容を徹底的に学習して例題・練習問題を確実に解けるようにしましょう。5年生の3月までには6年分の内容を習得し、残りの時間で参考書・問題集を活用しながら理解が曖昧な部分をなくすと安心です。
公立中高一貫校の適性検査では、基本的に小学校で習う範囲の問題しか出題されません。しかし、中には教科を超えた知識やスキルが必要な問題もあるため、6年生の1年間で練習を重ね応用力を身につけましょう。
どの教科でも苦手分野をつくらず、疑問をすぐに解消するよう心がけると効率よく総合的な学力を伸ばせます。
社会問題への関心を高める
公立中高一貫校の適性検査では、少子化や高齢化、環境問題などの社会問題に絡めた問題が出題される傾向があります。また、作文のテーマとして、社会問題に関する内容が出題されることもあります。
そのため、日頃からニュースや新聞などを見て社会問題への関心を高めましょう。具体的な方法としては、朝と夕方のニュースチェックを習慣化する、小学生向け新聞を購読するなどがあります。社会問題について家族でディスカッションする機会を積極的に設ければ、内容理解が深まり自分の考えをわかりやすく伝える表現力も磨かれるでしょう。
日常的に時事問題に触れていると国内外の重大ニュースがどんどんインプットされ、入試本番を迎える頃には豊富な知識が頭に入っているはずです。
記述力・表現力を強化する
公立中高一貫校の受検対策では、問題集を活用して文章を書く練習を重ね、記述力や表現力を強化することも重要です。
適性検査や作文で自分の考えを文章化するときは、全体の見通しを立ててから書き始めましょう。いきなり文章を書き始めると、何を伝えたいのかわからなくなり、指定文字数を超えてしまう可能性があります。結論や理由を明確にしてから書くことで、自分の主張が採点者に伝わり得点につながりやすくなります。
模範解答と自分の解答を照らし合わせ、改善点を見つけて繰り返し解くことも表現力を磨くためのポイントです。模範解答を参考にコツをつかみ、親御さんが積極的に褒めれば記述式の問題や作文が苦手なお子さんでも徐々に自信をつけられます。
志望校の過去問を繰り返し解く
公立中高一貫校の適性検査は、学校によって出題傾向が異なります。そのため、インターネットや書店で志望校の過去問を入手し、繰り返し解いて出題傾向を把握しましょう。
公式ホームページに過去問を掲載している関西の公立中高一貫校は、以下のとおりです。
過去問を解きながら「選択式の問題が多い」「資料を読み解く問題が多い」「記述式の文字数は少ない」などの傾向を把握できれば、必要な対策も見えてくるでしょう。実際の適性検査と同じ時間・環境で過去問に取り組むと、自分なりのペース配分や問題の取捨選択などの戦略を立てられます。
教科横断的な思考力を養う
教科横断的な思考力を養うことも、公立中高一貫校の適性検査で好成績を取るためには重要な対策の一つです。適性検査では教科の枠を超えた総合的な問題が出題されるため、日常生活の様々な体験を通して多角的に物事を見る考え方を養いましょう。
たとえば、体験活動や社会見学などに参加すると、一つの物事をさまざまな視点から捉える思考力が養われ、適性検査でも的確に資料・データを読み取れるようになります。豊富な経験はお子さんの興味を広げるきっかけにもなり、探究心や学習意欲を高められるでしょう。
日々の勉強では、単語を丸暗記せず「なぜそうなるのか」と仕組みや原理を理解することも思考力を育むためのコツです。
公立中学一貫校受検の塾はいつから通えばいい?
公立中高一貫校の入試内容は私立中学と大きく異なるため、本格的な受検対策をいつから始めるべきか悩む方も多いのではないでしょうか。
結論から述べると、余裕を持って受検勉強を進める場合は3〜4年生から学習塾に通い始めるのが理想的です。遅くても5年生の2月までには入塾しましょう。
ここからは、3〜4年生から公立中高一貫校受検の学習塾に通うメリットや、5年生で入塾するまでにやっておくべきことを解説します。お子さんの学力や志望校のレベルに合わせ、できる限り早いタイミングで学習塾を利用しましょう。
小学3~4年生からが理想的
学習習慣がついていないお子さんや、勉強に苦手意識があるお子さんは3〜4年生から学習塾に通い始めるのが理想的です。
公立中高一貫校の適性検査は私立中学の入試と異なり、小学校の学習範囲を超える問題は基本的に出題されません。しかし、教科横断的な思考力・表現力が求められるため、教科書レベルの基礎学力を確実に習得しておく必要があります。
3〜4年生から学習塾を利用すれば、適性検査に対応するための知識やスキルが段階的に身につき、余裕を持って入学者選抜に臨めるでしょう。3〜4年生で基礎を固め、5〜6年生で応用問題や過去問に取り組むことで合格の可能性を高められます。
遅くても小学5年生2月までには
入塾のタイミングが遅れたお子さんや、学習習慣や基礎学力がある程度身についているお子さんの場合でも遅くても5年生の2月までには入塾しましょう。
5年生の2月は、学習塾で新6年生の授業が始まるタイミングです。そのため、基本的な学習習慣や学力があれば5年生2月に入塾しても大きな遅れを取る心配はありません。
ただ、確実に合格するなら入塾までに以下の方法で受検対策を進めておきましょう。
- 教科書レベルの知識を確実に習得する
- 報告書(調査書)対策のために学校では良い成績を維持する
- 作文の練習で文章を書くことに慣れる
5年生の終わり頃から受検対策を始めた場合も、公立中高一貫校への合格は可能です。しかし、公立中高一貫校の倍率は高く、1人1校までしか受検できません。志望校に合格するためには少しでも早い時期から対策を始め、周りに差をつけられるよう準備を進める必要があると覚えておきましょう。
まとめ
本記事では、公立中高一貫校の概要や受検対策についてご説明しましたが、特に大切なポイントは以下の3つです。
- 公立中高一貫校の適性検査では、教科横断的な思考力や表現力を身につける特別な受検対策が必要
- 公立中高一貫校の受検対策では、教科書の内容を徹底的に理解し社会問題への関心や文章表現力を高めると良い
- 学習塾に通うタイミングは3〜4年生が理想的だが、遅くても5年生2月までに通うのがおすすめ
公立中高一貫校は、学費を抑えながら学校独自の教育プログラムを受けられる、余裕を持って大学受験対策ができるなどのメリットがあります。メリットが多い分、倍率も高くなるため早い時期から受検対策を開始し、確実に合格できるよう基礎学力や教科横断的な総合力を身につけましょう。
本記事の内容をもとに、お子さんにとって最適の進路先を見つけ、効率よく勉強を進められるよう心からお祈り申し上げます。