記憶力とはそもそも何なのか。記憶力がいい人・悪い人の違いは何か。記憶力を上げるためにはどうしたら良いのか。
本記事をご覧の方は、お子さんの記憶力を上げる方法について、様々な疑問や悩みを抱えていらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、お子さんの記憶力を上げる方法について、以下の5点を解説していきます。
- 記憶力の意味や記憶の種類
- 記憶力がいい人・悪い人の特徴
- 記憶力が低下する原因
- 記憶力を上げる勉強法
- 記憶力を上げる食べ物や生活習慣
本記事をご覧いただければ、記憶力を上げる様々な方法について、具体的に理解できます。記憶力を高めて効率的に勉強を進められるよう、ぜひ参考にしてください。
記憶力とは
記憶力とは、物事や過去の出来事を忘れずに覚えておく力のことです。似た言葉に「暗記力」もありますが、その意味は記憶力と異なります。記憶力と暗記力の違いは以下の通りです。
- 記憶力:覚えたことを忘れないようにする能力
- 暗記力:新しい物事を覚える時に発揮される能力
また、人が物事を記憶する流れは「記銘」「保持」「想起」の3つで成り立っています。
記憶の流れ | 役割 |
記銘 | 新しい情報をインプットする |
保持 | 記銘した情報を頭の中で保持する |
想起 | 保持した情報を思い出す |
つまり、記憶力を上げるには新しい情報を覚えるだけでなく、頭の中で保存し思い出すプロセスも必要です。心理学では、この「記銘・保持・想起」をするために発揮される能力を総称して「記憶力」と呼んでいます。
記憶の種類
記憶には、以下の5種類があります。勉強する上で重要な記憶もあるため、ぜひチェックしてみてください。
記憶の種類 | 特徴 |
意味記憶 | ・一般的な概念や言葉の意味など、生活の中で自然と身につけられる知識 ・勉強をして習得する知識 |
エピソード記憶 | ・自分が経験した出来事に関する記憶 |
手続き記憶 | ・一度覚えると長期的に保持できる体の記憶 |
短期記憶 | ・20秒〜数分ほどで忘れてしまう記憶 |
長期記憶 | ・数年〜数十年と長期的に保持できる記憶 |
意味記憶
意味記憶とは、一般的な概念や言葉の意味など、生活の中で自然と身につけられる知識のことです。たとえば「1年は12ヶ月」「ニワトリの子はヒヨコ」など、いつの間にか覚えているような知識を指します。
また、勉強をして習得する知識も意味記憶です。漢字の読み方や意味、算数の公式などが該当します。
つまり、受験勉強で覚える知識の大半は意味記憶になります。意味記憶を定着させるには、後ほど解説する「短期記憶」を「長期記憶」に変換させることが重要です。
エピソード記憶
エピソード記憶とは、自分が経験した出来事に関する記憶のことです。
「家族で温泉旅行に行った」「友達と遊んだ」などの思い出を指します。「楽しい・悲しい」などの感情を伴う自分の体験を記憶するのが特徴です。
エピソード記憶は、視覚・聴覚など様々な感覚を通して覚えることから、意味記憶に比べて忘れにくいといわれています。そのため、エピソード記憶の要素を勉強に取り入れると知識が定着しやすくなり、効率的に学習を進められます。
手続き記憶
手続き記憶とは、自転車の乗り方や楽器演奏など、一度覚えると長期的に保持できる体の記憶です。同じ動作を繰り返すことで習得でき、記憶が定着した後は無意識のうちに再現できます。
意味記憶やエピソード記憶のように、言葉の意味や「いつ」「どこで」などの文脈がなくても覚えられる点が特徴です。エピソード記憶と同様、手続き記憶も様々な勉強法と組み合わせることで、記憶力を高める効果を発揮します。
短期記憶
短期記憶とは、20秒〜数分ほどで忘れてしまう記憶のことです。新しい情報を覚えても、時間の経過とともに忘れてしまいます。
そのため、短期記憶は「役に立たない」と思われがちですが、以下のように日常生活の様々な場面で重要な役割を果たしています。
- 友達に頼まれたことを一時的に覚える
- 本の内容を記憶しながら続きを読む
ただし、中学受験に向けて記憶力を上げるためには、覚えた知識を短期記憶から長期記憶に変換させるプロセスが必要です。
長期記憶
長期記憶とは、一度覚えたら数年〜数十年と長期的に保持できる記憶のことです。長期記憶として保存できる記憶の容量は、無限だといわれています。
短期記憶を長期記憶に変換するには、インプットした情報を何度も唱えたり紙に書いたりして脳に定着させることが大切です。すると、受験本番で必要な知識をすぐに思い出せるようになるため、良い成績が期待できます。
受験勉強では、できるだけ多くの知識を長期記憶として定着させるよう心がけましょう。
記憶力がいい人の特徴
記憶力がいい人には、以下の特徴があります。
- いろいろなことに興味を持っている
- 集中力がある
- すべてを完璧に覚えようとしない
- 体験やエピソードと関連付けられる
- リラックスしている
記憶力を上げるには、勉強に対する姿勢も重要なポイントです。これらを意識づけるポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
いろいろなことに興味を持っている
記憶力がいい人の特徴は、いろいろなことに興味を持っていることです。
人は物事を記憶する時「生存に必要な情報かどうか」を脳が判断し、必要であれば長期記憶に転送します。生存に必要なかったとしても、同じ情報を何度も見るうちに脳は「必要だ」と錯覚を起こします。
つまり、いろいろなことに興味を持っていると情報に触れる機会が増え、様々な知識が長期記憶に切り替わりやすくなるのです。結果的に、記憶力が良くなり成績アップにつながります。
お子さんの興味・関心が薄い場合は、学んだことを生活と結びつけたり、体験学習に参加したりするのがおすすめです。学ぶ楽しさが実感できると、自然に興味の幅が広がっていきます。
集中力がある
記憶力がいい人は、集中力も高い傾向にあります。勉強に集中することで脳に余計な情報が入らず、インプットに専念できるためです。
新しい知識を覚える時、好きな漫画が近くにあったり周りから様々な音が聞こえたりすると、作業に集中できません。また、苦手分野の勉強は飽きやすく、注意力散漫になるお子さんも多いでしょう。
しかし、集中力がある人は余計な情報を遮断し、苦手教科でも前向きに取り組むことで必要な知識を確実に記憶します。いろいろなことに興味を持っていると、さらに高い集中力を発揮できます。
お子さんが勉強に集中できない場合は「学習環境を整える」「苦手教科は簡単な問題から」などの方法を試してみましょう。
すべてを完璧に覚えようとしない
記憶力がいい人は、すべての知識を完璧に覚えようとはしません。受験に必要な知識を取捨選択し、限られた時間の中で効率よく記憶します。
たとえば、志望校の入試傾向が「公民分野は出題が少ない」とわかれば、積極的に勉強する必要はありません。その分、頻出問題の記憶に時間をかけられるでしょう。
中学受験の出題範囲は広く、勉強時間も限られているため、すべての知識を完璧に覚えるのはほぼ不可能です。記憶力を上げるには、入試に向けて覚えるべき情報とそうでないものを明確に分け、必要な知識を確実に定着させましょう。
志望校をある程度絞り込んで過去問をチェックすると、出題傾向から覚えるべき知識を判断できます。
体験やエピソードと関連付けられる
学習内容を自分自身の体験やエピソードと関連付けられることも、記憶力がいい人の特徴です。自分の体験に関わる「エピソード記憶」は長期記憶として定着されやすいため、記憶力向上につながります。
たとえば、理科の「雲と天気の変化」について学習した時、単純に教科書を見るだけでは簡単に知識が定着しません。しかし「キャンプの時に見た大きな雲が積乱雲だ」と自分の体験に結びつければ、長期記憶として脳内に残ります。
この考え方ができると様々な知識を覚えられるようになり、記憶力も上がるでしょう。関連付けるのが難しい場合は、エピソードとのつながりに気づくきっかけとなる言葉を、親御さんから投げかけてみましょう。
リラックスしている
リラックスした状態で勉強に取り組める人も、記憶力が高い傾向にあります。
人は緊張やストレスを感じると、記憶力が低下するといわれています。実際、緊張状態で勉強に取り組んでも、色々なことが気になって集中できない人は多いでしょう。そのため、脳の機能を最大限まで高めるには、勉強中もリラックスする必要があります。
リラックスして勉強するには、室温の調整や、定期的な換気で快適な空間をつくることが大切です。お子さんの頑張りを認め、見守る姿勢を示すことで精神的にも安心させましょう。
ただし、リラックスしすぎても集中力が落ちる可能性があります。勉強をする時は、適度な緊張感とリラックス状態を維持できるような学習環境を整えてあげましょう。
記憶力が悪い人の特徴
以下の特徴に当てはまる人は、なかなか記憶力が伸びない可能性があります。
- 生活習慣が悪い
- 勉強に集中していない
- 目で見るだけで覚えようとする
- 復習や反復学習をしない
- 一つの記憶法に固執する
該当する場合は学習環境や勉強法を見直し、少しずつ改善していきましょう。
生活習慣が悪い
記憶力を上げるには、質の高い睡眠や食事、適度な運動が大切です。しかし、これらの生活習慣が悪い人は、記憶力が落ちる可能性があります。
以下を参考に、現在の生活習慣をチェックしてみてください。当てはまる項目が多い場合は、生活習慣が悪いと考えられます。
- 体を動かす機会が少ない
- スマホやテレビ、ゲームの使用が1日3時間以上
- 朝食を食べない日がある
- 菓子類を食べ続ける習慣がある
- 睡眠時間が9時間より少ない
生活習慣を改善するには、親御さんのサポートが重要です。栄養バランスの良い食事を用意し、睡眠時間も十分に確保しましょう。勉強の合間や休日に体を動かすことで、運動習慣も身につけられます。
勉強に集中していない
勉強に集中していない人も、記憶力が悪い傾向にあります。集中力がないと、机に座っても気持ちが勉強に向かないため、必要な知識が定着しません。この状況を改善するには集中できない原因を探り、それに合わせた対処法を取りましょう。
たとえば、勉強中に別の行動を取る場合は、机周りの道具を整理します。学習環境が整えば、勉強に集中できるかもしれません。お子さんが上の空であれば、一度話を聞いてみましょう。不安や悩みがあって集中できない場合は、安心させてあげることが大切です。
また、テレビを見たりおやつを食べたりしながら勉強する「ながら勉強」も集中力が落ちる原因になります。勉強に集中できるよう、家庭でルールを決めておきましょう。
目で見るだけで覚えようとする
「黒板の内容をノートに書かない」「単語帳を見るだけ」など、目で見て覚えようとするのも、記憶力が悪い人の特徴です。
短期記憶を長期記憶に変えるには、覚えた知識をエピソードと関連付けたり、反復したりする必要があります。目で見るだけだと長期記憶には結びつかないため、せっかく覚えても時間の経過とともに忘れるでしょう。記憶力アップのためには、目で見た知識を他の学習法で定着させることが大切です。
たとえば、黒板の内容はノートに書き写すことで、手を動かしながら覚えられます。単語帳も声に出して読むと、視覚・聴覚が刺激されるため効果的です。
目で見るだけで終わらせず、様々な勉強法を組み合わせて確実に記憶しましょう。
復習や反復学習をしない
復習や反復学習をしない人は、覚えた知識を短時間で忘れてしまうため、記憶力が身につきません。この傾向は、一度学習して「わかったつもり」になってしまうお子さんに多く見られます。
反復学習とは、同じ内容を繰り返し学習することです。記憶力を上げるには、反復学習によって「思い出す」プロセスを繰り返す必要があります。
新しい知識を習得したら、何日かに分けて繰り返し復習するのが反復学習の基本です。最初は時間がかかりますが、復習を繰り返すうちに短時間で思い出せるようになります。
一度きりの学習だとすぐに忘れるため、記憶力が上がらず良い成績を残せません。受験勉強では復習や反復学習を取り入れ、少しずつ記憶力をアップさせましょう。
一つの記憶法に固執する
「評判だから」「自分に合っているから」と一つの記憶法に固執し続ける人も、記憶力が伸びない傾向にあります。
たとえば、「自分に合うから」という理由で、単語帳だけ使って勉強すると短期間で飽きるかもしれません。同じ勉強法だと脳に与える刺激も少なくなるため、記憶に残りにくくなるでしょう。記憶力を上げるには、勉強を継続しつつ様々な方法を組み合わせて、脳を活性化させることが大切です。
先ほどの例でいうと、単語帳だけではなく問題集やノートも使って覚えるようにします。人に教えたり、説明したりするアウトプットも効果的です。
このように、一つの記憶法に固執せず、複数の勉強法を取り入れると脳が刺激されて記憶力が高まります。
記憶力が低下する原因
間違った勉強法だけでなく、以下の4つも記憶力が低下する原因になります。
- 偏った食事
- 睡眠不足
- 体調不良や病気
- ストレス
これらに当てはまると、正しい勉強法を取り入れても、なかなか記憶力が伸びません。規則正しい生活を送り、記憶力の低下を防ぎましょう。
偏った食事
脳の機能を発揮するためには、バランスの良い食事で様々な栄養を摂る必要があります。しかし、偏った食事で栄養バランスが乱れると脳の働きが悪くなり、記憶力も低下するでしょう。
脳に関わる栄養素の中で重要なのは「ブドウ糖」です。厚生労働省によると、ブドウ糖は「脳がエネルギーとして利用できる唯一の物質」といわれてます。
そのため、集中力を上げるにはブドウ糖を摂取し、脳に栄養を届けることが大切です。他の栄養素もバランスよく取り入れ、脳の働きを助けるようにしましょう。
睡眠不足
睡眠不足も、記憶力を低下させる原因の一つです。
脳は睡眠中に情報を整理し、記憶を定着させるといわれています。睡眠不足だと脳が十分に働かないため、勉強した内容もすぐに忘れてしまうでしょう。
また、睡眠不足になると日中の集中力も低下します。眠気のせいで集中できず、勉強効率も下がって悪循環です。
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド 2023」によると、小学生の睡眠時間は9〜12時間が適切だと示されています。お子さんの健康を維持するためにも、十分な睡眠時間を確保しましょう。
体調不良や病気
風邪や病気などで体調不良になった場合も、記憶力が低下する可能性があります。
たとえば、風邪で鼻が詰まったり熱が出たりすると、頭がぼーっとして勉強に集中できません。無理に勉強すると、風邪が長引く場合もあるでしょう。
記憶力の低下を防ぐには、毎日の生活リズムを整えて健康を維持することが大切です。それでも体調不良になった場合は、無理せず休むようにしましょう。
ストレス
学校生活や習い事、家庭のストレスがあると、お子さんは勉強に集中できず記憶が定着しにくくなってしまいます。
お子さんのストレスを解消するには、まず話を聞いて原因を探ることが大切です。お子さんが話したくない様子であれば、気長に待ってあげましょう。
ストレスの原因がわかったら、アドバイスしたり解決に向けて行動を起こしたりします。ストレスが解消されると、お子さんは安心して再び勉強に集中できるでしょう。
記憶力を上げる方法
記憶力を上げるには、以下の勉強法がおすすめです。すきま時間に取り組める勉強法もあるため、ぜひ参考にしてください。
- イメージ化
- 語呂合わせ
- 瞑想
- メモリーパレス
- メモリーツリー
- 五感を使った記憶
- 分散学習
- 脳トレのゲームやアプリ
イメージ化
イメージ化とは、覚える対象を頭の中で絵や映像に変換し、記憶する方法です。文字だけでは覚えにくい知識を映像に変えることで、強い印象を残します。
たとえば、ことわざを覚える時は下記のイメージをしてみましょう。
ことわざ | イメージする内容 |
三人寄れば文殊の知恵 | 三人集まって話し合った結果アイデアがひらめく様子 |
立つ鳥跡を濁さず | 鳥が後始末をきちんとしてから飛び立つ様子 |
出る杭は打たれる | 才能のある人が周りから妬まれている様子 |
単純に言葉だけを暗記するのではなく、イメージ化することで内容理解も深められます。イメージ化は普段から意識することで身につけられるため、日常生活の様々な場面で活用してみましょう。
語呂合わせ
語呂合わせも記憶力を上げるにはおすすめの方法です。歴史の年号を覚える際に、以下のような形でよく使われます。
年号 | 語呂合わせ | 出来事 |
710年 | なんと(710)見事な平城京 | 平城京に都を移す |
1338年 | いざ都(1338)で幕府を開こう | 室町幕府が開かれる |
1867年 | いや(18)慶喜むな(67)しい大政奉還 | 江戸幕府が滅亡する |
語呂合わせは、単なる数字に意味を持たせることで覚える知識をイメージできる点がメリットです。リズム感がある語呂合わせだと、声に出しながら楽しく学習できます。
また、語呂合わせは数字だけでなく、英語に当てはめることも可能です。難しい言葉の羅列で覚えにくいものがあれば、自分なりの語呂合わせを考えてみましょう。
瞑想
瞑想は目を閉じて心を静め、気持ちをリラックスさせる心身療法です。瞑想をすると脳が休まるため、記憶力・集中力を向上できます。
ここでは、小学生のお子さんでも手軽にできる方法をご紹介します。以下の手順で実践しましょう。
- 音楽を流す、体を動かすなどの方法で心身をリラックスさせる
- 椅子に座って目を閉じる
- 深呼吸をしながら呼吸に集中する
瞑想前は静かな音楽を流したり、軽くストレッチをしたりします。深呼吸は「口から息を吐く→鼻から吸う」を繰り返すのがポイントです。
小学生であれば、瞑想の時間は1分程度から始めてみましょう。最初は慣れないかもしれませんが、継続することで徐々に記憶力・集中力が高まっていきます。
メモリーパレス
メモリーパレスとは、頭の中に架空の「宮殿(パレス)」を作り、そこに必要な情報を置く記憶法です。イメージ化した情報を、特定の場所と結びつけることで記憶力を大幅に向上させます。メモリーパレスのやり方は以下の通りです。
- 自分がよく知る場所(自宅や学校、通学路など)に架空の宮殿を作り出す
- 宮殿に覚えたい情報を配置する
- 宮殿に配置した情報を定期的に思い出す
宮殿に置く情報は、できるだけ具体的にイメージしましょう。たとえば、英単語の「baseball(野球)」を覚える場合、宮殿の中で野球するイメージを詳細に描きます。
また、宮殿に置いた情報は定期的に思い出し、長期記憶に変換させるよう心がけましょう。
メモリーツリー
メモリーツリーとは、関連する情報同士をつなげることで記憶する学習法です。覚える知識をマップ形式で表すため、学習内容を体系的に理解できます。
メモリーツリーを作る際は、以下の手順で進めましょう。
- 紙の中心にテーマを書く
- テーマに関連する情報を書いて線でつなげる
- 追加情報があれば書き足す
- 色ペンで印をつけたり関係するイラストを描いたりする
情報を書く時は、単語や短い文章でまとめましょう。情報同士を線でつなげると、全体の関係性が見えてきます。
また、メモリーツリーは色ペンやイラストを活用し、楽しく作れるのが特徴です。情報を書く過程で頭の中も整理されるため、作りながら様々な知識を身につけられます。
五感を使った記憶
記憶力を上げるには「視覚・聴覚・触覚・味覚・体感覚」の五感をフル活用して勉強に取り組みましょう。
一般的に、情報の8割は視覚から入ってくるといわれています。そのため、勉強をする時は他の感覚を意識的に使うのがポイントです。
たとえば、暗記をする時は「音読」や「音声を聞く」などの方法を取り入れてみましょう。口を動かしたり耳で聞いたりすることで、脳が刺激されて覚えやすくなります。
空中に指で文字を書く「空書」という勉強法もあります。この方法は、大きく手を動かすことで脳が活性化されるため、記憶力アップに効果的です。
五感を通じて覚えると忘れにくくなり、長期記憶として定着するでしょう。
分散学習
分散学習とは、一度覚えた情報を忘れそうなタイミングで思い出し、記憶を強化させる勉強法です。
時間間隔を空けてから復習することで、効率的に記憶を定着させられます。
心理学者であるエビングハウスの研究によると、人間は学んだことの大半を約1日で忘れることが明らかになっています。しかし、カナダのウォータール大学の研究では、復習を繰り返すことで記憶の忘却を防げることがわかりました。
この仕組みを生かした勉強法が分散学習です。
分散学習をする時は「最初は1日後」「次は7日後」「次は16日後」のように、少しずつ時間間隔を伸ばしながら復習しましょう。思い出す作業を何度も繰り返すことで忘れにくくなり、記憶力が向上します。
脳トレのゲームやアプリ
記憶力を伸ばすために、脳トレのゲームやアプリも活用しましょう。すきま時間に楽しく勉強できます。脳トレのゲームやアプリには、以下のように様々な種類があります。
- 言葉・数字のパズルゲーム
- 記憶力トレーニング
- 論理的思考を鍛えるゲーム
- 暗算のゲーム
ゲームやアプリを選ぶ際は、安全性や使いやすさ、難易度を判断基準にしましょう。お子さんが興味を持つかどうかも重要なポイントです。
また、利用時はプレイ時間や使い方について、事前に約束事を決めましょう。
あくまでゲームやアプリは勉強を補うものとし、好奇心を刺激したり学ぶ楽しさを実感させたりするために有効活用してください。
記憶力を上げる栄養素と食べ物
記憶力を上げるには、食生活の改善も効果的です。脳の働きを良くする以下の栄養素を、毎日の食事に取り入れてみましょう。
- 糖質
- ビタミンB1
- ビタミンB12
- DHA
- カルシウム
- BDNF
- テオブロミン
これらの栄養素は、朝昼晩の食事や間食などで少しずつ摂取するのがポイントです。
糖質
糖質は、脳のエネルギー源となる重要な栄養素です。ただし、一度に多量摂取すると血糖値が急激に上下し、脳の働きが悪くなる可能性があります。
糖質を摂取する時は、次の食品を少量食べるように心がけましょう。
- バナナ
- ブドウ糖配合のラムネ
勉強の合間にバナナを食べると、適度な糖質で脳が活性化され、記憶力が高まります。
おすすめのお菓子は、ブドウ糖配合のラムネです。ブドウ糖は素早く体に吸収されてエネルギーに変わるため、短時間での効果が期待できます。
ビタミンB1
ビタミンB1は、糖の代謝を助ける重要な役割を持っています。また、神経系の機能を保つためにも重要な栄養素です。
ビタミンB1が含まれる代表的な食べ物としては、以下の2つが挙げられます。
- 豚肉
- 大豆
豚肉と大豆は、どちらも毎日の食事に取り入れやすい食品です。豚肉をメインのおかずにして味噌汁を用意するなど、献立を工夫してみましょう。
ビタミンB1は、糖質と一緒に摂ることで脳の働きが良くなるといわれています。
ビタミンB12
ビタミンB12は、神経機能を維持するために重要な栄養素で、不足すると記憶力に問題が生じる可能性があるといわれています。
ビタミンB12は、以下のような動物性食品に含まれているのが特徴です。
- しじみ
- 海苔
どちらも食材も味噌汁に入れると手軽に栄養を摂れるでしょう。一度に多く摂るのではなく、普段の料理に少し加えるのがおすすめです。
DHA
DHAには、脳神経の再生や保護など、記憶力を維持するための働きがあります。DHAを摂取することで、脳内のスムーズな情報伝達が可能です。
DHAは、以下の食べ物に多く含まれています。
- イワシ
- サバ
イワシやサバをはじめとする青魚はDHAが豊富です。調理をする際は、脂が流れないような調理方法にしましょう。おすすめの料理は刺身や煮魚、フライなどです。
カルシウム
カルシウムは、脳内の情報伝達に関わる重要な働きをしています。強い歯や骨をつくる栄養素でもあるため、成長期のお子さんは積極的に摂取しましょう。
カルシウムが多く取れる食べ物は、以下の通りです。
- チーズ
- 大豆
- ごま
上記の中でも、チーズや牛乳などの乳製品は体に吸収しやすいといわれています。成長期の子どもが一日に摂取するカルシウム量として、農林水産省が示している「700〜1000mg」を目安に、他の栄養素と合わせてバランスよく摂りましょう。
BDNF
BDNFは、食べ物に含まれている栄養ではなく、人の脳や血液中にある栄養因子のことです。血液中のBDNF濃度が高いと、神経細胞の働きを活性化させて記憶力を向上させます。
以下の食べ物を摂取すると、体内のBDNFが増えて記憶力が上がるといわれています。
- チョコレート
- カマンベールチーズ
チョコレートは「カカオ70%以上」がおすすめです。カカオ豆に含まれる「カカオポリフェノール」によって、BDNFが増加します。
テオブロミン
テオブロミンは、体内の自律神経を調整するセロトニンに働きかけることで、リラックス効果をもたらす栄養素です。
テオブロミンは、BDNFの際にも紹介をしたカカオ豆に多く含まれています。そのため、カカオ豆を原料とする次の食べ物を摂取しましょう。
- カカオ70%以上のチョコレート
- ココア
テオブロミンを摂取すると脳がリラックス状態になり、記憶力が上がりやすくなります。チョコレートやココアは気軽に用意でき、記憶力向上に良い効果をもたらすため、勉強前や休憩中に摂るのがおすすめです。
記憶力を上げる生活習慣
記憶力を上げるには、生活習慣の改善も心がけましょう。具体的には、以下の方法を日常生活に取り入れてみてください。
- 早寝早起きを心がける
- 人付き合いを楽しむ
- 有酸素運動を行う
- 趣味を楽しむ
生活習慣が改善されると記憶力が上がるのはもちろん、メンタルの安定や体力向上など、様々な効果が期待されます。健康的に生活するためにも、少しずつ改善していきましょう。
早寝早起きを心がける
記憶力を上げるには、早寝早起きを心がけて睡眠不足を解消しましょう。
一般的に、22時から2時は「睡眠のゴールデンタイム」といわれています。これは、眠りが深く成長ホルモンの分泌が多くなる時間帯のことです。成長ホルモンによって日中の疲れが取れて、朝もスッキリと起きられます。
また、良質な睡眠は記憶力向上にも効果があります。脳は睡眠時に記憶を定着させたり、不要な情報を消去したりするためです。勉強中に覚えた知識を整理するためにも、十分な睡眠時間を確保しましょう。
お子さんの寝つきが悪い場合は、部屋を暗くしたり適温に設定したりして、リラックスさせることが大切です。スマホやゲームも、寝る1〜2時間前には使用を控えましょう。
人付き合いを楽しむ
記憶力を上げるためには、脳に刺激を与える必要があります。積極的にコミュニケーションを取って人付き合いを楽しむと、脳が刺激され記憶力も上がるでしょう。
たとえば、相手の話を聞きながら気持ちを想像したり、返答を考えたりすることで脳は活性化されます。自分が話をする時も、どのように伝えるか思考を巡らせるプロセスが、脳にとって良い刺激です。
このように、他人とコミュニケーションをとると頭をたくさん使うため、脳の働きが良くなり記憶力アップにつながります。
ただし、人付き合いが苦手なお子さんの場合は、無理をさせる必要はありません。親子で話す機会を増やすだけでも、脳に十分な刺激を与えられます。
有酸素運動を行う
有酸素運動を行うと、脳の活性化に必要なBDNFが体内で生成され、記憶力が上がるといわれています。
有酸素運動とは、ウォーキングやジョギング、水泳など長時間にわたって取り組む運動のことです。
脳を活性化させるためには、以下の有酸素運動を積極的に取り入れましょう。
- 鬼ごっこ
- 水泳
- なわとび
- 自転車
文部科学省の「幼児期運動指針」によると「3〜6歳の子どもは一日あたり60分以上の運動が必要」といわれており、小学生の場合はさらに運動量が増えます。しかし、この時間には休み時間や放課後に遊ぶ時間も含まれているため、上記の運動だけを長時間する必要はありません。
適度に汗をかく運動を取り入れつつ、他の場面でも意識的に体を動かすようにしましょう。
趣味を楽しむ
記憶力を上げるには、趣味を楽しむ時間も大切です。趣味に熱中することで「ドーパミン」というホルモンが脳から分泌され、集中力が高まります。
また、受験勉強で溜まりがちなストレスを発散させる上でも、趣味の時間は重要です。受験勉強をしていると、つい趣味を我慢してしまいますが、集中力を取り戻すためにも時間をつくってあげましょう。
趣味に取り組むタイミングや時間は、お子さんと話し合って決めるのがおすすめです。趣味が運動だと休憩中でも取り組めますが、ゲームの場合は勉強後に時間を設定しましょう。
料理や工作など時間をかけて取り組む趣味については、休日に行うことでじっくり楽しめるかもしれません。
気分転換をしつつ集中力・記憶力の向上につなげられるよう、やり方を工夫しましょう。
まとめ
本記事では、記憶力を上げる方法についてご説明しましたが、特に大切なポイントは次の3つです。
- 記憶力を上げるためには、短期記憶を長期記憶に変換させる必要がある
- 生活習慣が悪かったり覚え方を間違ったりすると、知識が定着せず記憶力も低下する
- 記憶力を上げるには「イメージ化」「五感の活用」「反復学習」などを取り入れつつ、生活習慣を改善すると良い
記憶力を上げるポイントは、勉強法だけでなく生活習慣や食生活もトータルで見直し、改善することです。楽しく学びながら記憶力を上げられるよう、様々な方法を実践してみてください。
本記事の内容をもとに、親御さんやお子さんにとって最適な方法を見つけ、成績の向上や中学受験に向けて、より一層記憶力を高められるたすけになれば幸いです。