中学受験で塾に通うにはいくら費用がかかるのか、受験時や入学後にかかる費用はいくらくらいなのか、現在の家庭の経済状況で中学受験に臨めるのか、費用を抑える方法はないかなど、費用面に関する悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では中学受験にかかる費用について、以下の5点について、網羅的に解説しています。
- 中学受験までにかかる費用、通い始める時期による費用の違い
- 中学受験本番でかかる費用
- 私立中学に通うのに必要な費用
- 中学受験するご家庭の親御さんの年収について
- 中学受験の費用を抑える方法
本記事を最後まで読めば、中学受験に関する費用について理解できるとともに、受験から合格後の経済状況までを具体的にイメージすることができます。
家計への影響を慎重に考慮しながら、お子さんにとって最適な選択をしていただけましたら幸いです。
目次
中学受験までにかかる費用とは
中学受験本番までに様々な費用がかかることを知っておく必要があります。ここでは、主に次の点について解説していきます。
- 塾にかかる費用
- 交通費や細かい出費
- 通信費
まず、塾へ通うための費用が大きな負担となります。これには授業料だけでなく、教材費や特別講座、模試代など、様々な費用が含まれています。さらに、通塾や学校見学などにかかる交通費や、携帯電話代やオンライン授業などの通信費がかかることもあります。
これらの、受験に関係する費用は、家計への月々の大きな負担となります。そのため、事前に受験にかかる費用を見積もり、計画的に貯金したり最適な支出管理を行ったりすることが重要です。そうして無理のない範囲で受験に臨むことで、家計への影響を最小限に抑えることができます。
塾にかかる費用
次に中学受験をする際に一般的に必要となる塾の費用について、主に次の二つを解説していきます。
- 授業料や教材費など
- 模試や特別講座、集中講座などの費用
これらは、塾や指導形式により金額に大きな差が出る部分になりますので、ご家庭の状況に合わせ、どこを重視し、どこを節約するのかを十分に検討する必要があります。
授業料や教材費など
中学受験のための塾の費用として、大きな金額を占めるものは授業料と教材費の2つです。これらは集団塾、個別指導塾、家庭教師などの指導形式により大きく異なっており、一般的な年額は次の表のようになります。
集団塾 | 個別指導塾 | 家庭教師 | |
授業料 | 32~90万円 | 36~98万円 | 80~120万円 |
教材費 | 5~9万円 | 0~1.2万円 | なし |
まず、授業料に関して見てみると、集団塾、個別指導、家庭教師の順に高額になっていくことがわかります。
集団塾は講師1人に対して複数の生徒を指導するため、多くは比較的リーズナブルな料金設定になっています。一方で個別指導塾や家庭教師は、講師1人に対して生徒1人、もしくは数名を個別に指導するため、より手厚い指導が行えるものの、費用が高くなる傾向があります。
次に教材費ですが、集団塾の場合は5〜9万円程度が一般的です。集団塾の教材費が高めなのは、塾ならではのノウハウが詰め込まれた教材や、各中学校に特化したカリキュラムの教材が用意されているためです。
一方、個別指導塾や家庭教師の教材費は比較的低めに抑えられています。基本的に生徒が持っている教材を用いて指導を行うため、教材費を安く済ませることが可能です。
これらから、塾の選択にあたっては、お子さんの学習スタイルや家計の事情を見極め、コストと指導の質のバランスを判断することが大切になります。
模試や特別講座、集中講座などの費用
中学受験に向けた塾の費用には、通常の授業料以外にも様々な費用が発生します。
志望校の偏差値に足りているかどうか、日々勉強していることが入試で通用するかどうかを確認するために、定期的に模試を受ける必要があります。模試の費用は年間5万円程度になることもあります。
また、夏期講習、冬期講習、直前講習などの特別講座も志望校へ合格するためには重要です。これらの講座は1講座につき、数万円から10万円近くの費用がかかり、全てを受講すると総額50万円以上の出費になる可能性があります。
集団塾の場合、特別講座を受講することが当たり前になっている塾もあります。特別講義が終わった後の通常授業は、特別講義に参加していたことが前提になっていることがあります。
ほとんどの生徒が特別講義に参加する中で、ご自身のお子さんのみ参加していないと、その後の授業についていけなくなる可能性があります。任意参加だとしても夏期・冬期・直前講習などの講座に参加する前提で費用を考えておいた方が良いでしょう。
さらに、土曜講座や日曜講座、志望校に合わせた特別講座など、各塾で様々な講座が用意されています。これらも全てを受講しようとするとお子さんへの負担が大きくなるだけでなく、家計にも大きな負担がかかってしまいます。そのため、お子さんの学習状況や家計を考えながら、効果的な講座を厳選することが重要です。
交通費や飲食費などの細かい出費
塾に通うために、バスや電車を利用する場合、交通費が必要になります。また、自家用車で送迎する場合にはガソリン代がかかります。
加えて、塾が終わるのが遅くなったり、長時間、塾にいることになると、外で軽く食事をしたり、飲み物を買ったりすることもあるでしょう。こうした費用は、一回一回は少額でも毎回積み重なっていくとある程度の出費になることがあります。
さらには、受験校候補となる中学校の見学やオープンスクールへの参加、受験当日の移動など、中学受験に関連した交通費もかかってきます。年間の交通費や飲食などの細かい出費も合計すると数万円に及ぶ可能性があります。
このように、中学受験を目指すご家庭にとって交通費や日々の細かい出費も経済的な負担となります。受験校の選定や学習の方法などと併せて、これらの費用も考慮すべきポイントとなります。
通信費
中学受験を考えるうえで、前述した飲食費などの細かい出費に含まれない費用として、通信費なども考慮しなければいけません。
通信費というのは、主に携帯電話の料金やオンライン授業の費用、またこれらの端末や機器(スマートフォンやパソコン、ヘッドホンなどの周辺機器)に関する費用のことを指しています。
端末や周辺機器については、購入時に大きく費用がかかりますし、通信費は意識していないと知らず知らずのうちに高額になってしまうこともありますので、しっかりと検討して少しでも出費を抑えられるようにしましょう。
携帯電話の通信費
多くの受験生は、夜遅くまで塾に通うことになるため、安全を確保するために携帯電話を持たせるご家庭が増えています。塾からの連絡を受けたり、送迎の際に連絡を取り合ったりするのに、携帯電話は必要不可欠と言えるでしょう。
携帯電話の通信費は月々数千円から1万円前後かかることが一般的ですが、格安SIMや学割プランを利用することで1,000〜2,000円程度まで抑えることが可能です。
そのため、受験生の親御さんは、お子さんにとって適切な携帯電話の選択や料金プランの比較など、通信費について十分に検討する必要があります。無駄な支出を抑えつつ、お子さんの安全を確保できる最適な選択をすることが大切です。
オンライン授業
一部では、オンライン授業を提供している塾が増えてきています。この際、追加の通信費が発生することに留意しておく必要があります。
オンライン授業を受講するためには、安定したインターネット環境が自宅に不可欠です。すでにWi-Fi環境が整っていれば問題ありませんが、新たにインターネット回線を契約する必要がある場合、月々2,000~4,000円程度の費用がかかります。
オンライン授業にはメリットも多くありますが、機器の購入や通信環境の整備など、追加で必要となる費用を十分に見積もり、家計への影響を考慮する必要があります。
スマートフォンやパソコンなどの端末や周辺機器
上記で解説しました通信費やオンライン授業の費用などは、スマートフォンやパソコンなどの端末をすでに持っている前提でお伝えしました。
しかし、お子さん用のスマートフォンやパソコンが必要となると、端末代として数万円から10万円を超す費用がかかります。オンライン授業の場合は、その周辺機器であるヘッドセットなども必要になります。
こうして一つずつ中学受験に関わる費用を項目毎に確認していくと、塾にかかる費用以外にも考慮しておかなければならない費用が存在します。
いつから塾に通うかで費用は大きく異なる
中学受験に向けた塾選びにおいて、いつから通い始めるのかで費用が大きく異なります。
中学受験では、早い段階から計画的に学習を進めることが重要です。そのため、多くのご家庭では4年生から塾に通い始めるのが一般的です。4年生から3年間にわたって塾に通うことで、着実に学力を積み上げていくことができます。
ただし、早期から塾に通うことは、それだけ塾の費用が多くかかることになります。次の表は、各学年における平均的な塾の授業料のモデルケースを示したものです。
4年 | 5年 | 6年 | 合計 | |
A塾 | ¥35,000 | ¥40,000 | ¥40,000 | ¥1,180,000 |
B塾 | ¥36,300 | ¥46,200 | ¥53,900 | ¥1,636,800 |
C塾 | ¥27,700 | ¥36,200 | ¥45,700 | ¥1,315,200 |
平均月額 | ¥33,000 | ¥40,800 | ¥46,500 | ¥1,443,600 |
平均年額 | ¥396,000 | ¥489,600 | ¥558,000 | ¥1,443,600 |
※簡略化のため、平均値の10の位を四捨五入しています。
例えば、A塾の場合、4年生から6年生まで3年間の塾費用の合計は約118万円です。一方、B塾では約163万円、C塾でも約131万円と、塾によって金額に差がありますが、いずれの場合も決して安い値段ではありません。
ほとんどの塾で、学年が進むにつれて費用が増加していくのが一般的です。4年生の平均月額が約3.3万円なのに対し、6年生では約4.7万円と、1.4倍近くにもなります。早期から塾に通うことで、確実に学力は身につきます。しかし、4年生は、6年生に比べれば比較的低額な授業料であるとはいえ、経済的な負担も大きくなります。
したがって、中学受験を考えるご家庭においては、学力と費用のバランスを慎重に検討することが重要になります。可能な限り早い段階で塾に通いたいという希望と、家計への影響、この両者のバランスを上手に取りながら、塾の併用や切り替えを含めて最適な塾選びをすることが重要です。
塾や家庭教師を併用する事例もある
中学受験では、集団塾だけでなく個別指導塾や家庭教師を併用するご家庭もあります。それは、集団と個別、それぞれのメリット・デメリットを最大限に活かすためです。
集団塾では、講師が多数の生徒に対応するため、個別の学習ペースや弱点に合わせた指導が困難ですが、夏期講習や直前講習など確立されたノウハウに基づいた特別対策が用意されているのが強みです。また、個別指導塾に比べて安価で多くの授業時間がとれるため学習習慣を身につけやすいことがメリットとして挙げられます。
ただし、お子さんの性格によっては集団塾で学力が伸び悩み、個別指導塾で悩みが解消されて学力が伸びていくケースもありますので、授業時間の長さが学力に直結するわけではありません。
個別指導では、生徒一人ひとりに合わせて必要な勉強に集中できるため、きめ細やかな指導が可能です。ただし、特別対策の機会が少なく、例えば夏休み等の長期休暇中であっても普段と変わらない指導内容・指導時間になってしまうことがあります。
そこで、集団塾と個別指導塾の両方を組み合わせることで、お子さんの学習状況に柔軟に対応することができます。例えば、集団塾で基礎学力の定着や志望校に特化した対策を行い、個別指導塾で弱点を克服するといったように併用することでそれぞれのメリット・デメリットを補うことができます。
ただし、塾を併用するとなると学費の負担が大きくなるデメリットもありますので、費用面での検討も十分に行う必要があります。お子さんやご家庭の状況に応じて、最適な学習スタイルを選択することが大切です。
中学受験本番でかかる費用
中学受験本番にかかる費用に関しては、受験料が最も大きな経済的負担となります。ここでは私立中学の受験料、公立・国立中高一貫の受験料について詳しく説明いたします。
公立・国立中高一貫校は受験料が一律に定められており、割安に受験することができる一方で、私立中学は学校によって受験料が独自に定められているため、公立・国立中高一貫校より高額なうえに金額に幅があります。
さらに、合格を確実にするため複数の私立中学を受験しようとする場合、受験料が大幅に増加することに注意しなければなりません。
合格の確率と経済的負担のバランスを上手く見極めながら、受験校を慎重に検討するようにしましょう。
私立中学の受験料
私立中学の受験料は、地域や学校によって大きな差があります。一般的に、関東の私立中学では平均して2.5~3万円ほどの受験料がかかるのに対し、関西の私立中学は平均すると2万円前後とやや安めの傾向にあります。
関西の有名私立中学である、灘中学校、東大寺学園中学校、大阪星光学院中学校では、いずれも受験料が2万円に設定されています。
しかし、多くの受験生は、複数の私立中学を受験するため、関西の私立中学の受験料が安いといっても、これらの受験料が家計に大きな負担になりえます。一般的には5校ほど受験する生徒が多いため、合計すると10万円以上の費用がかかることもあります。
したがって、私立中学受験では、各中学校の受験料を確認し、家庭の経済状況に合わせて、最適な受験校を選択することが重要になってきます。受験料の比較検討は、私立中学受験の際の欠かせない要素の一つと言えます。
公立・国立中高一貫校の受験料
次に、公立・国立中高一貫校の受験料について見ていきます。
まず、公立や国立の中高一貫校は、基本的に受験料が一律に定められています。私立中学は各学校で受験料を独自に設定できますが、公立中高一貫校の受験料は2,200円(ただし福岡県と佐賀県は2,100円)、国立中高一貫校の受験料は5,000円と定められています。
このように、公立・国立中高一貫校は、私立中学に比べて大幅に安い受験料で受験できることが分かります。私立中学の受験料は、併願などにより10万円を超える場合があるなど、かなり高額となっているのに対し、公立・国立の場合は原則一校しか受験できませんので、上述のように2,200円や5,000円と、格段に低い水準となっています。
このように、公立・国立中高一貫校は、全国一律の安い受験料設定となっているのが大きな特徴です。経済的な負担が軽いために、受験機会が広く確保されていると言えます。
※参考元:大阪府立中学校入学者選抜実施要項、国立大学等の授業料その他の費用に関する省令
私立中学に通うのに必要な費用
ここからは、私立中学に合格した時にかかる費用について解説していきます。
私立中学へ通うにあたっては、次の3つの費用がかかります。
- 入学金
- 授業料
- その他にかかる費用
これらの費用は、入学手続き時にまとめて支払うケースが多いため、事前に学校の募集要項等を確認し、十分な支払い計画を立てておく必要があります。
入学金
私立中学に合格して入学手続きを行う際に、入学金の支払いが必要になります。入学金は、関西の有名私立中学では平均して20万円前後です。一方、公立中学の場合は入学金はかかりません。
ここで注意が必要なのは、第一志望校の合格発表前に、併願校に合格した場合です。併願校の納入期日より後に第一志望校の合格発表がある場合、併願校に入学金を振り込まなければならない可能性があります。多くの場合、第一志望校に合格した場合でも、併願校の入学金は返金されず、二重の出費となってしまいますが、学校によっては一部返金されるところもありますので事前に確認しておく必要があります。
授業料
入学金とあわせて大きな費用の1つが授業料です。関西の有名私立中学の場合、年間の授業料は40~70万円程度と非常に高額です。中学3年間を通して換算すると、合計で120~210万円ほどの授業料がかかることになります。
これに対し、公立中学の授業料は無料となっています。つまり、私立中学と公立中学では、授業料の負担に大きな差があるといえます。
私立中学の授業料の納入方法は、学校によって様々です。一括払いが基本ですが、3期分納など、分割払いを選択できるところもあります。入学時に全額を用意するのは困難な家庭も多いため、分納制度の有無や条件など、学校の募集要項を事前によく確認しておくことが重要です。
さらに、入学金とは異なり、授業料は毎年度支払う必要があります。したがって、中学3年間の学費総額を十分に確認し、長期的な家計への影響を検討しておく必要があります。私立中学の授業料は非常に高額ですので、経済的な負担が大きいことを理解しておきましょう。
その他にかかる費用
入学後には入学金や授業料以外にも、さまざまな費用がかかります。
中でも大きな費用として施設費が挙げられ、関西の有名私立中学では10万円から25万円ほどかかります。一方、公立校では施設費がかからない学校がほとんどです。
また、文部科学省の調査によると、私立中学の場合、その他にかかる費用として年間平均約46.3万円が必要となっているのに対し、公立中学では約13.2万円となっています。
私立中学 | 公立中学 | |
修学旅行費等 | ¥30,988 | ¥15,824 |
学校納入金等 | ¥163,233 | ¥14,538 |
図書・学用品・実習材料費等 | ¥68,578 | ¥32,368 |
教科外活動費 | ¥37,172 | ¥24,172 |
通学関係費 | ¥152,487 | ¥39,516 |
その他 | ¥10,365 | ¥5,424 |
合計 | ¥462,823 | ¥131,842 |
具体的な内訳を見てみると、まず修学旅行費では、私立中学が約3.1万円、公立中学が約1.6万円と、私立中学の方が倍近くかかっています。学校納入金などの諸費用も、私立中学が約16.3万円、公立中学が約1.5万円と大きな開きがあります。さらに、図書・学用品・実習材料費などの教材費も、私立中学が約6.9万円、公立中学が約3.2万円と、約2倍の差があります。
そのほかにも、部活動などの教科外活動費や、通学関係費などにも大きな差が見られます。特に通学関係費は、私立中学が約15.2万円、公立中学が約4万円と、約4倍もの開きがあります。
つまり、私立中学への進学を検討する際は、単に授業料や入学金だけでなく、これらのその他費用の負担についても十分に理解しておく必要があります。
【比較】高校受験する場合の総額
中学受験をした場合と、公立中学に進学して高校受験をした場合では、かかる費用に大きな違いがあります。
私立中学は中高一貫教育を行っているため、中学受験時の出費が大きくなりますが、高校受験の必要がなくなります。一方、公立中学に進学して高校受験する場合、中学受験時の出費は抑えられますが、高校受験時の費用が新たにかかることになります。
これらの違いを理解し、お子さんの希望やご家庭の経済状況に合わせて最適な進路を選択してください。
公立高校を受験する場合
公立高校を受験する場合、主な費用として考えられるのは、塾への授業料と志望校の受験料です。
まず、塾の費用に関しては、公立高校と私立高校の受験を目指す場合で、大きな違いはありません。多くの塾では、公立高校と私立高校への受験対策を同時に行っているため、コースの設定や費用に大きな差はないのが一般的です。文部科学省の調査によると、塾にかかる年間平均費用は約35万円となっています。
前述の通り、公立高校の受験料は、全国統一で2,200円(ただし福岡県と佐賀県は2,100円)となっています。公立高校の受験は私立高校に比べて、受験料の負担が軽いのが特徴です。
つまり、公立高校を目指す場合でも、塾の費用は私立高校受験と変わりませんが、受験料自体は大幅に安価であるため、全体としての経済的負担は軽減されると言えます。
私立高校を受験する場合
次に、私立高校を受験する場合の塾への授業料と、各私立高校の受験料、私立高校の学費について考えていきます。
まず、塾の費用については、公立高校受験と同様、平均して年間35万円ほどかかるのが一般的です。
さらに、受験料ですが、私立高校の場合は学校によって大きく異なり、1~3万円ほどと幅があります。さらに、私立高校は複数受験することが一般的なため、受験料が学校の数だけ増えていくことにも注意が必要です。複数の私立高校を受験すれば、受験料が大幅に増加することになります。
学費についても、学校によって大きく異なりますが、年間約50〜100万円程度の費用がかかります。3年間の学費と部活動などの活動の費用などを合わせると約200〜400万円程度かかると想定するのが現実的です。
以上のように、私立高校受験では、学習塾への授業料は公立高校と変わりませんが、受験料の負担と学費が大きくなります。特に複数の私立高校を受験する場合には、受験料の合計額と志望校の学費は必ず確認しておきましょう。
中学受験と高校受験にかかる費用の比較
以上の点を踏まえて、公立高校と私立高校を受験する場合の費用を比較してみます。主な違いは以下の3点です。
- 塾にかかる費用
- 受験料
- 合格した際の学費
まず、塾の費用の違いです。多くの塾では、公立高校と私立高校向けの受験コースを併設しているため、塾代の差は大きくありません。文部科学省の調査によると、高校受験に向けた学習塾への年間平均費用は約35万円となっています。このため、公立高校と私立高校では、塾の費用に大きな差はないと言えます。
次に、受験料の違いです。公立高校の受験料は全国統一で2,200円となっています。これに対し、私立高校の受験料は学校によって異なり、一般的に1〜3万円ほどが必要となります。つまり、私立高校を複数受験すると、受験料の合計額が大幅に増加することになります。
最後に、合格した際の学費の違いです。公立高校の場合、授業料は無料となっています。一方、私立高校の授業料は学校によってさまざまですが、年間50万円から100万円ほどが一般的です。さらに、入学金などの諸費用も必要となるため、私立高校進学には膨大な出費がかかることになります。
しかし、現在は国も各都道府県も私立高校無償化の取り組みや補助金などの政策が進められており、段階的に私立高校も公立高校と同様、段階的に授業料が無料となる見込みです。
このことから、進路選択の際には各家庭の経済状況を踏まえて十分に検討する必要があります。教育の質はもちろんのこと、経済的な負担にも十分配慮することが重要です。
中学受験するご家庭の親御さんの年収について
中学受験にかかる費用は決して安いものではなく、計画的に準備していくことが必要だということはわかりましたが、中学受験をする他のご家庭はどれくらいの年収なのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
ここでは、文部科学省による調査からわかるご家庭の年収と、結果に対してどのような心構えで受験に臨めばよいかについて説明していきたいと思います。
年収1000万円以上の家庭が半数
文部科学省の調査(令和3年度子供の学習費調査)によると、中学受験を行うご家庭の年収は比較的高い水準にあることがわかります。調査結果では、年収1000万円以上の世帯が約58%を占めており、なかでも1200万円以上のご家庭が全体で最も多い割合となっています。
しかし、これらの調査結果をそのまま捉え、受験を諦めてしまうのは早計です。中学受験には経済的な負担が伴うものの、中間所得層の家庭でも受験を検討することが多いのが実情です。
年収1000万円以上の世帯が半数を占めているという捉え方ではなく、むしろ1000万円以下の世帯も同程度の割合で中学受験に取り組んでいると考えることができるのです。
このように、中学受験に関するご家庭の経済状況は一概に高所得層に偏っているわけではなく、幅広い層の親御さんがお子さんの教育に積極的に取り組んでいるのが実態だと言えるでしょう。
子供の将来を考えた選択を
前述のとおり、中学受験に際して、ご家庭の年収が十分ではないという理由で諦めてしまうのは避けるべきです。お子さんの将来を考えた時、年収だけで受験を選択肢から除外してしまうのは、その後の人生で大きな損失となる可能性もあります。
確かに、受験に伴う経済的な負担は決して軽いものではありません。塾の費用、教材費、受験料など、様々な出費がかかります。しかし、お子さんやご家族には通常その金額で手にできるもの以上に、得られる経験があるはずです。良い学校に進学できれば、より充実した教育を受けられ、さらに将来的な可能性も広がるでしょう。
ご家庭の経済力に左右されることなく、お子さんの未来のために受験を検討していくことが理想であると言えるでしょう。
中学受験の費用を抑える方法
これまでに見ていただいたように、中学受験には受験前や受験時においてだけでなく入学後にも大きな費用がかかります。そのため、ご家庭の経済状況によっては中学受験を諦めざるを得ないと思った方もいらっしゃるかもしれません。
そこで、ここでは受験時や入学後に利用できる費用を抑える方法についてご紹介していきます。お子さんの将来を少しでも広げられるよう、これらの方法を検討してみるといいでしょう。
志望校を絞る
中学受験では、通常、出願する学校ごとに受験料がかかります。志望校を絞り込まない場合、多くの学校を受験することになり、受験料の負担が大きくなります。
一方で、志望校を絞り込むことで、受験する学校数を抑えることができ、平均すると1校あたり2万円前後の受験料を抑えることができます。この受験料の節約は、特に家計の負担が大きいご家庭にとっては大きなメリットとなります。
また、志望校を絞ることにより、志望校の受験対策により時間を使い、集中して取り組むことができます。教材費や塾代などの費用も、絞られた志望校に重点的に割り当てることができます。
以上のように、中学受験において志望校を絞ることは、時間的なメリットと受験料を抑えることの両方につながります。
奨学金制度や助成金を活用する
中学入学後の学費を抑える有効な方法の1つが、奨学金の活用です。
中学在学時に使える奨学金は返済不要の給付型が多く、家計の負担を軽減することができます。高校生を対象とした奨学金に比べ、中学生を対象とした制度の数は少ないですが、主な奨学金の一例をご紹介します。
- カトリック・マリア会・セント・ジョセフ奨学育英基金
- 加藤山崎修学支援金
- 似鳥国際奨学財団
- その他、各学校独自の奨学金制度
「カトリック・マリア会・セント・ジョセフ奨学育英基金」は経済的理由(世帯収入350万円が目安)により、就学困難な事情があることが条件で支給される奨学金です。こちらは返済不要で月額2万円が支給されます。
「加藤山崎修学支援金」は世帯の年間所得200万円未満を目安とし、成績優秀者として認められた場合にのみ給付される支援金です。こちらも返済不要で年額5~7万円が支給されます。
「似鳥国際奨学財団」はひとり親家庭への支援を目的とした奨学金です。世帯総収入800万円以下を目安とし、月額3万円が支給されます。
その他、灘育英会奨学金(灘中学校)など、各学校による独自の奨学金制度もありますので、志望校にそのような奨学金制度があるかどうか調べてみるといいでしょう。
これらの奨学金の活用には、申請要件や手続き等、いくつかの注意点がありますので、条件を詳しく確認する必要があります。しかし、ご家庭に合った適切な制度を見つけ、活用することで、中学受験における学費の負担を大幅に軽減できます。
自治体による授業料支援制度
私立中学入学後に国や自治体による各種助成金制度を活用することで、主に高校進学の際の教育費の負担を軽減することができます。特に関西地区では、以下のような助成金制度が設けられています。
<高校進学時に使える支援制度>
- 私立高校授業料無償化制度(大阪府)
- 私立高等学校等奨学のための給付金(大阪府)
- 授業料軽減補助金(兵庫県)
<経済状況により中学在学時に使える支援制度>
- 大阪府私立高等学校等授業料減免制度(大阪府)
まず、大阪府の「私立高校授業料無償化制度」です。この制度では、年収が590万円未満の世帯の場合、私立高校の授業料が実質無償となります。また、年収が590万円以上800万円未満の世帯においても、子ども一人世帯で負担額が年20万円までの軽減措置が適用されます。私立中学に入学後、高校に進学した際にこの制度を活用すれば、授業料負担を大幅に軽減できます。
さらに、「私立高等学校等奨学のための給付金」制度では、住民税非課税世帯に対して、授業料以外の教育費の補助がなされます。これにより、雑費等の負担も軽減されます。
大阪府以外でも、兵庫県の「授業料軽減補助金」制度があります。こちらは年収590万円未満の世帯が対象で、11,000円の補助が受けられます。
一方で、中学在学時に使える支援制度としては「大阪府私立高等学校等授業料減免制度」があります。これは失職などにより家計が急変した世帯において授業料が減免される制度です。通常時に利用できるものではありませんが、いざというときにこういった制度があることは心に留めておくとよいでしょう。
このように、国や自治体の助成金制度を活用することで、高校進学時の教育費の大幅な負担軽減が可能になります。各制度の申請要件や手続きは異なりますが、適切に活用すれば、ご家庭の経済的な負担を大きく軽減できるのです。
中学受験には塾を効果的に活用しよう
中学受験を選択する際、適切な塾選びを行うことで、結果としてお子さんの学力をしっかりと伸ばすことができ、不要な費用を追加せず、費用を節約することができます。
お子さんに合った指導方法や教材を選ぶことが、短期間で着実な力をつけ、志望校の合格へとつながります。
一方で、適切でない塾を選んでしまうと、無駄な時間と費用がかかってしまう可能性があります。適切な塾の選び方については「中学受験のための塾選びに必要な情報をまとめてお届け【関西版】」をご参考ください。
当塾では集団個別指導塾という形の指導方法を採用しており、一人一人の学習進度、理解度を細かく確認しながら、学力を最大限効率的にあげられるような個別カリキュラムを組んで指導しています。
学力が伸び悩んでいるお子さんや、少ない塾の時間でもしっかりと学力を伸ばしたいと考えている親御さんに向いています。
ご興味を持っていただけた方は、お問い合わせや公式LINEからご連絡ください。
まとめ
本記事は、中学受験にかかる様々な費用にスポットをあてて網羅的に解説してまいりました。重要な点について、最後にもう一度振り返ります。
- 早い段階から塾に通うと学力は上がるが費用もかかる
- 塾選びや志望校選びを入念に行うことで効果的に費用を抑えることができる
- 私立中学に入学時にまとまった費用が必要になる他、毎年の出費も考慮する必要がある
- 年収に不安がある場合は奨学金や助成金の活用を検討する
本記事を通して理解された内容をもとに、計画的な費用の準備、最適な塾選びや学校選びをすることで無駄のない効果的な中学受験対策を心がけてください。
ご家庭とお子さんにとって最良の道を選べるよう心から願っております。