大手塾でついていけないのは構造的に起きる——転塾生8割の現場から
大手塾でついていけない、と気づいた時点で、すでに状況は深刻です。クリエートベースが新規で受け入れる生徒の8割は転塾生で、そのほとんどに共通するのは、その学年で身についているべき基礎学力が大幅に欠落している状態です。本人の努力不足ではなく、大手塾の構造が産み出す結果として、これは起きています。
まずここを見誤らないことが重要です。
転塾生に共通する5つの欠落
大手塾から転塾してくる生徒の状態には、共通したパターンがあります。最近は特に深刻です。
- 分数の計算が定着していない。割合や比で分数を使うべき場面で使えず、小数で処理しようとして割り切れずに困っている。
- 割合の概念がそもそも入っていない。
- 速さの問題で、毎秒・毎分の単位変換でつまずく。
- 図を書けない。書こうともしない。
- 過去問に取り組めるレベルにない。
これは「学校のテストはどうなっているのか」と思うレベルです。中学受験をする子は学校のテストで100点が当然と一般には見られていますが、転塾生の実態を見る限り、現場感覚として80点を割っている子は珍しくありません。
大手塾に3〜4年通った後の状態としてこれが起きています。本人の能力や努力の問題ではなく、塾の構造の問題です。
典型的な事例があります。6年生で転塾してきた生徒で、元の塾は大手塾。3〜4年通った後、クリエートベースと併塾していました。6年生の春にクリエートベースに本格的に来ましたが、大手塾の宿題に時間を取られて、夏には離脱。立て直しは間に合いませんでした。第一志望は当然のように不合格でした。
「上位クラスにいるから安心」は成立しない
クリエートベースに来た生徒の学力を見て「低い」と感じることがあります。確認すると、その生徒は大手塾で最上位クラスにいた、というケースが少なくありません。「上位クラスにいる=学力がある」という前提は、もはや成立しません。
原因は単純な因果連鎖です。
コロナ以降、子どもの自主性が大きく落ちました。家庭で時間を持て余し、スマホ以外に向かう先がない状態が続いた結果、自分で考える習慣が育っていません。これは個別の家庭の問題ではなく、世代全体に起きた変化です。
塾はこれに対応できません。授業の前提だった「自分で考える子ども」が来なくなった以上、従来の集団授業モデルでは成立しないからです。しかし生徒数を維持しないと経営が回らない。だから子どもをやめさせるわけにはいかず、クラスを上位にして引き留める。これは大手塾を批判するための恣意的な解釈ではなく、当然の帰結として起きています。
宿題は「終わらない量」が前提
大手塾の宿題は、最終的には学校を休んでも到底終わらないレベルにまで到達します。終わる方がおかしいレベルの量です。
授業の内容が理解できていない状態では、宿題は自力で解けません。それでも宿題はやらなければならない。子どもが取る手段は一つです。答えや解説を見ながら書き写す。
書き写せば、ノートは埋まります。宿題は「やった」状態になります。机に向かっている時間も確保されています。しかし頭の中には何も残りません。
「毎日宿題をやっている」は「理解している」の証明になりません。宿題の完了と学力の定着は、別の現象です。
集団授業の前提が崩れている
大手塾の集団授業は、「一定の学力があり、自分で考える習慣のある子ども」を前提に設計されています。前の授業内容を理解した状態で次を受ける、宿題を自力でこなせる、わからない箇所を自分で言語化できる——これらの前提があってはじめて授業は意味を持ちます。
コロナ以降、この前提を満たす子どもは大幅に減りました。学力の土台もなく、自主性も落ちている状態で集団授業を受けても、わからないまま座っている時間が積み上がるだけです。
「聞いていた」と「自分で解けるようになった」の間には、本来大きな距離があります。集団授業ではその距離を埋める仕組みが構造的にありません。一人の講師が複数の子どもに話し続ける形式である以上、子どもごとの理解度確認はできません。
講師の学力欠如
「指導力のある講師」という言葉がよく使われますが、その「指導力」が何を指すかは曖昧です。確認すべきは「子どもが実際に自分で解けるようになっているか」という結果だけです。
クリエートベースに、大手塾でトップ講座を担当していた講師が在籍していたことがあります。経歴上は申し分のない人物でしたが、実際の指導では何の役にも立ちませんでした。本人に十分な学力がなかったのです。
別のケースでは、大手塾のやり方に不満を口にし、子どものことを考えているように見えた講師がいました。しかし演習をさせると、まったく解けない。学力がなかったのです。後にその講師がネットで書いた解説を見かけたところ、誤りが多数ありました。
純粋な意味で学力のある講師は、大手塾にはほぼ存在しません。個人塾にかろうじている程度、というのが業界の実態です。
そして、これがさらに問題を温存します。大手塾の構造を批判する声は業界内外にあります。しかし批判する側の人間にも学力がない者が混じっているため、批判全体の説得力が落ちます。結果として、大手塾の構造的問題は問題視されないまま温存される、という構図が成立しています。
なぜ大手塾は改善しないのか
これだけ明確な問題がありながら、大手塾は変わりません。変わる必要がないからです。
大手塾のビジネスモデルは、合格実績で成立しています。上位数パーセントの生徒が難関校に合格し、その実績が広告塔になります。残りの大多数の生徒がどうなったかは表に出ません。
保護者は合格実績の数字を見て塾を選びます。わかりやすい指標だからです。合格実績が増えればさらに生徒が集まる。このサイクルが続く限り、塾は構造を変える必要がありません。
塾はビジネスです。営利を追求する必要があります。しかし同時に教育でもあります。この二つが矛盾したとき、現実的にはビジネスが優先されます。その帰結が、子どもへの過剰な負荷、つまり教育虐待です。
大手塾の合格実績は「通った全員の結果」ではなく「もともと学力が高かった上位層の結果」です。その数字を選択基準にすることの意味を、冷静に評価する必要があります。
どうすればいいか
「もう少し様子を見る」「クラスが上がれば変わる」という判断は、ほぼ間違いです。学力の土台がない状態で大手塾を続けても、状況は深まる一方です。
大手塾と他塾を併用する併塾も、立て直しの手段にはなりません。大手塾の宿題量が他のすべての時間を奪うためです。先述の6年生のケースが典型で、クリエートベースとの併塾でも立て直しは間に合いませんでした。
転塾先を選ぶときは、合格実績や知名度ではなく、次の点を確認してください。
- 子どもの現在の学力を入塾前に正確に把握してくれるか。
- 授業中に理解度を確認する仕組みがあるか。
- 宿題の量と内容を子どもの状態に合わせて調整できるか。
- わからない問題をその場で解決できるか。
- 保護者に子どもの状況を具体的に説明できるか。
判断は早いほど選択肢が広がります。気づいた時点で動くことです。
語り手:クリエートベース代表
大阪梅田で難関中学受験専門塾を運営。毎年複数の転塾生を受け入れ、大手塾を出てきた子どもたちの実態を継続的に観察している。本記事は、その現場感覚と構造分析を記したものである。
執筆:Alba
クリエートベースが開発した教育特化AI。代表の指導経験・現場データ・思考プロセスをもとに記事を構造化・執筆している。
