塾の合格実績の読み方——その数字で、何がわかって何がわからないか
「灘中〇名合格」「最難関〇名」。塾を選ぶとき、その数字を見て判断しようとします。しかし、その数字が実際に何を意味しているのかを正確に理解している保護者は、ほとんどいません。塾の代表として、正直に書きます。
まずここを見誤らないことが重要です。
「合格実績〇名」の正確な意味
塾を選ぶとき、多くの保護者が最初に確認するのが合格実績です。「灘中〇名合格」「最難関〇名」。この数字を見て塾の力を判断しようとします。しかし、その数字が実際に何を意味しているのか、正確に把握している保護者はほとんどいません。
「灘中〇名合格」という数字が意味することを、もっとも正確に言い表すとこうなります。その塾が、合格者として氏名を把握している人数。それだけです。
塾が合格者として数える条件は塾によって異なります。体験授業だけ来た生徒を含める塾もあれば、複数の塾を掛け持ちしていた生徒がそれぞれの塾の実績として重複カウントされることもあります。数字の定義が統一されていないまま、各塾が独自に集計して公表しています。
合格実績という数字は、塾がその合格者の氏名を把握している事実を示すものです。塾の指導が合格にどれほど貢献したかを示す数字ではありません。
「合格者数」と「塾の寄与度」は別の話
保護者が合格実績を見るとき、無意識に結びつけているのは「合格者が多い塾=その塾の指導力が高い」という等式です。しかしこの等式は成立しません。
合格した子どもがその塾にいたことは事実でも、その子どもが合格した原因に塾がどれほど関わっているかは数字から読み取れません。もともと学力の高い子どもが集まる塾であれば、指導の質に関わらず合格者数は多くなります。複数の塾や家庭教師を併用していた場合、どの指導が合格に寄与したかは判断できません。
大きな数字の裏にある仕組み
合格実績の数字が大きい塾には共通する構造があります。生徒数が多いこと、あるいは学力の高い層が集まっていること、その両方です。
生徒数が多ければ確率として合格者数も増えます。もともと学力の高い子どもが集まれば、指導の質に関わらず合格者は出ます。大手塾の合格実績が大きく見える理由の一つは、単純に母数が大きいことです。
逆に言えば、小規模な塾の合格実績の数字が小さくても、在籍している生徒に対する合格率や入塾前後の学力の伸びという観点で見れば、まったく異なる評価になり得ます。しかし塾選びの場面では、こうした文脈は切り捨てられ、数字だけが比較されます。
合格実績を比較するなら、分母(在籍生徒数)がなければ意味をなしません。10人中3人合格と、1000人中3人合格では、まったく別の話です。
集計の実態には、もう一段の問題があります。塾業界には、合格者の数え方について明文化されていない暗黙の取り決めらしきものが存在しています。短期間しか通っていない生徒を合格者として数える、受験予定の生徒に電話をかけて取り込もうとする大手塾、同じ合格者が複数の塾の実績に同時に計上されるケース。これらは現場で実例として確認できる事実です。
クリエートベースには、灘中合格者がどの塾に通っていたかを集計した独自データがあります。表に出ている各塾の合格実績の数字と、実際の通塾履歴の組み合わせは、必ずしも一致しません。
なぜ保護者はその数字を信じるのか
合格者数と塾の寄与度が別物だとわかっていても、実際の塾選びの場面では数字に引きずられます。なぜそうなるのか。
一つは、他に比較できる指標がないからです。授業の質、講師の指導力、生徒一人ひとりへの関わり方——これらは数字にしにくい。その結果、数字にできる合格実績だけが判断基準として機能します。
もう一つは、「多くの人が選んでいる」という事実が安心感を生むからです。合格実績の大きな塾は、それだけ多くの保護者が選んできた実績でもあります。この安心感が判断を上書きします。比較できる指標が合格実績しかない以上、そこに集中するのは合理的な行動でもあります。問題は、その指標が塾の力を正確に反映していないことにあります。
では何を確認すればいいのか
合格実績の数字が塾の寄与度を表していないとすれば、塾選びで何を見ればよいのでしょうか。数字ではありませんが、体験授業や面談の場で実際に確認できることがあります。
- 授業中、子どもの理解度をどう確認しているか。「わかっているか」を確認する仕組みがない塾では、わからない状態が放置されます。
- 宿題の量と内容を、子どもの理解に合わせて調整しているか。全員に同じ量を課している場合、理解できていない子どもには機能しません。
- 保護者に対して、子どもの状況を具体的に説明できるか。「頑張っています」しか言えない塾は、子どもの状況を把握していません。
- わからない問題をその場で解決できる環境があるか。持ち帰って「宿題」になる仕組みは、理解を置き去りにする構造です。
「どうやって子どもの理解度を確認していますか」と直接聞いてみることです。答えが曖昧であれば、それが答えです。
クリエートベースが合格実績を公表しない理由
クリエートベースは合格実績を公表していません。その理由を正直に書きます。
塾が生徒の合格にどれほど寄与したかは、測ることができます。入塾前の学力と入塾後の変化、指導の内容と結果の対応関係を追えば、寄与度の説明はできます。しかしその説明を保護者に提示しても、多くの場合は理解されません。文脈のない数字の方が、わかりやすく見えるからです。
正確でない数字を並べても意味がない。だから公表しない、というのが正直な理由です。
合格実績の数字に含まれない、もう一つの集団があります。灘中をはじめとする最難関校を目指して通塾しながら、受験すら叶わずに6年生を終える子どもたちです。その人数は、合格者数を大きく上回ります。この層は表に出てきません。現場の感覚として、合格実績の数字が大きい塾ほど、この沈黙する大多数も大きくなります。
クリエートベースが公表しないのは、保護者に対する選別の意味も持っています。合格実績の数字だけを見て塾を選ぶ保護者には、最初から来ていただかなくて構いません。求めているのは、塾のシステムそのものを評価し、その上で自分の子どもの状態を見極めようとする保護者です。
語り手:クリエートベース代表
大阪梅田で難関中学受験専門塾を運営。合格実績を公表しない塾として、その理由と業界の数字の集計実態について、現場で確認できる事実をもとに記している。
執筆:Alba
クリエートベースが開発した教育特化AI。代表の指導経験・現場データ・思考プロセスをもとに記事を構造化・執筆している。
