私の頭の中には、生徒の学力を把握するための構造がありました。どの問題のどの部分でつまずいているか、次に何を与えるべきか、どの順番で何を積み上げるか——これらの判断を、私は指導の中で自然に行っていました。誰でもできることだと思っていました。しかしどういうわけか、誰もできませんでした。だからシステムに落とすことにしました。

01|解けない講師、いい加減な対応

構造を理解しない講師

中学受験算数の業界には、教えている問題を自分では解けない講師が存在します。これは例外ではありません。解法を覚えて教えているだけで、なぜその解法が成立するのかを構造として説明できない。生徒がつまずいたとき、別の角度から問題に切り込む手段を持っていません。

把握できないから対応がいい加減になる

学力の把握も同様です。生徒が「できない」という事実は観察できても、「何がどのようにできないのか」を構造として把握する手段がない。だから対応がいい加減になります。問題を増やす、繰り返させる、叱る——これらは学力の把握に基づいた対応ではなく、把握できないことの代替行動です。

分類の間違いが虐待を誘発する

この構造の根本には、問題の分類が間違っていることがあります。進学塾が商業的に作り上げた意味のない分野分けは、思考のどの部分が欠けているかを特定できません。分野は結果の分類であって、プロセスの分類ではないからです。把握できない指導者が圧力をかけ、理解できない子どもが追い詰められる——この構造は、不適切な教育環境を作り、教育虐待を誘発します。この問題については別稿で詳しく論じています。

これは日本だけの問題ではない

名前が思考を止めるという構造は、日本の教育に限りません。ビジネスの世界にも同じ構造が存在します。SWOT分析がその典型です。「SWOT分析をしなければならない」という認識から始まる。なぜその分析が必要なのか、その結果が何を導くのかを考えずに、フォーマットを埋めることが目的になる。着眼点がないまま手段だけが動く——これは進学塾の分野分けとまったく同じ構造です。名前が先にある限り、思考は止まります。

02|データベースの設計思想

名前ではなく、プロセスで分類する

このデータベースは問題を名前で分類しません。着眼点・処理手段・結果という思考のプロセスを軸として分類します。

着眼点は答えから逆算して定められる

着眼点は、答えから逆算して定められます。最適解の構造が見えている人間は、問題のどこを見るべきかを正確に定められます。その着眼点から、複数の処理手段が発生します。どの手段を選ぶかは、生徒の能力とリソースによって変わります。取れない手段もあります。それも含めて把握することが、学力の正確な理解です。

Thinking Circuit Structure
思考回路の構造——着眼点・処理手段・結果
最適解
Optimal Answer
答えは一つ
← 逆算
着眼点
Focal Point
答えから逆算して定める
処理手段(複数発生)
手段 A
簡単な方法
高コスト・低負荷
最適解に到達
手段 B
大変な方法
低コスト・高負荷
最適解に到達
手段 C
取れない手段
能力・リソース不足
行き止まり
着眼点・処理手段・結果はセットである。バラバラに語るから問題は複雑になり、解決しない。着眼点は答えから逆算して定められます。だから答えの構造を理解している人間だけが、正確な着眼点を持てます。

判断をシステムに乗せる

この構造で最終的には10万問規模になる見通しのこのデータベースで問題を分類することで、生徒の「何ができて何ができないか」ではなく「思考のどの部分が機能していてどの部分が欠けているか」を特定できるようになります。その特定に基づいて、次に与えるべき問題が自動的に決まります。これが自動化の本質です。判断をシステムに乗せることで、私でなくても正確な対応ができるようになります。

すでに展開できる状態にある

分析アルゴリズムはすでに完成しています。問題の登録作業もいつでも開始できる状態にあります。使う場所ができれば、即座に展開できます。

クリエートベースの指導は、この設計思想に基づいています。
まず学力の構造を把握することから始めます。

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03|受験ツールではない

作る過程で用途が変わった

このデータベースは中学受験のために作り始めました。しかし作る過程で、その用途が受験にとどまらないことが見えてきました。

思考回路の体系化である

着眼点・処理手段・結果という構造は、算数の問題だけに適用されるものではありません。ビジネスの意思決定も、社会問題の分析も、根底にある構造は同じです。算数はその構造を訓練するための、最も純粋な入口です。数字という抽象が、余分な解釈を排除するからです。このデータベースが体系化しているのは算数の解法ではなく、思考回路そのものです。

04|日本と海外、そしてデータベースの可能性

日本——実験は完了している

日本の進学塾は、意味のない分野分けを体系化し、それを正しい教育として何世代にもわたって引き継いできました。その分野を正しいと信じた人間が次の世代を教育し、負のスパイラルが完成しています。これは失敗したシステムではありません。OSのアップデートを拒否し続けたレガシーシステムの末路です。壁は内側から取り除けません。日本の教育改善に、私はもう興味がありません。

海外——空白には付加できる

海外は別です。方程式処理を機械的に学んだ人間には空白があります。思考回路の構築を妨げる壁がない。空白には、新しい構造を付加できます。このデータベースはその空白に直接展開できます。私一人では届かない場所に、システムとして届けることができます。

このデータベースを作れる人間は、あらゆるシステムを作れます。着眼点・処理手段・結果を構造として実装する能力は、算数に限らない。これは始まりに過ぎません。

05|この理念でできること

着眼点・処理手段・結果というセットを構造として実装できれば、その応用領域は算数にとどまりません。以下はその一例です。

教育・学習

問題の自動生成、学力の数値化、個別カリキュラムの自動設計、学習の効率化と時間短縮。生徒の思考のどの部分が欠けているかを特定し、必要な問題を必要な順番で届ける。人間の判断を介在させずに、正確な対応ができます。

法律・制度

法律の運用も、着眼点(何が問われているか)・処理手段(適用できる条文・判例)・結果(判断)という構造で記述できます。契約書や規約の構造分析、判例の着眼点による分類も同様です。

医療・診断

症状という問題文から原因を逆算する診断支援、治療手段の選択肢の体系化。医師の判断を補助するシステムとして、同じ構造が機能します。

ビジネス・意思決定

経営判断の構造化、リスク分析の体系化、採用・評価基準の設計。複雑に見える意思決定も、着眼点を正しく定めれば処理手段の選択肢が見えてきます。

社会問題・政策

政策立案における問題の着眼点の特定、社会問題の構造分析。バラバラに語られるから解決しない問題は、構造として整理することで初めて扱えるようになります。

すべての事象の構造は、本質的に同じです。着眼点を定め、処理手段を選び、結果を出す。この回路を実装できる人間が、次の世界を設計します。

06|AIがあったから、ここまで来られた

私がAIを使い始めて、まだ2ヶ月です。しかしその2ヶ月の対話の中で、自分の頭の中にあった構造が初めて言語化されました。DBの本当の用途が見えてきたのも、この過程でのことです。

AIは思考回路を持つ人間にとって、これまで存在しなかった規模の道具です。着眼点を正しく定められる人間が使えば、一人では届かなかった場所に届きます。しかし着眼点を持たない人間が使えば、間違った方向に高速で進むだけです。

薬は使い方によって、善にも悪にもなります。AIも同じです。問題はAIではなく、使う側の思考回路です。